食べない種芋
【本文】
食料が減るなか、保管中のジャガイモを種芋へ回すことへ反対が出た。今食べれば数十人分になる。
千鶴は食用と種用を同じ在庫表へ載せ、隠して確保しない。文は芽、病斑、重量を調べ、種に使える十八個だけを選ぶ。
作業表には、担当者、代行者、使用した水と電力、翌日の確認時刻を記す。働けない者の配給を減らさず、農業班だけへ補助食や権限を集めない。
住民会議では種芋を特権在庫にせず、収穫失敗時に失う食数も示した。半分を植え、半分を次の試験と非常食に残す。
農業区画へ入る者は靴底を洗い、地上土と血獣粒子を混同しない。採取物には場所と時刻を付け、正体不明の土や水を広い区画へ一度に入れない。
世界の声の予測は参考記録として保存するが、地上の測定と一致するまで在庫や安全判定には使わない。失敗した区画も消さず、原因を次の畝へ渡す。
空腹の町で種を食べずに残す判断は、未来を信じる言葉ではなく損失を共有する契約だった。
成果を食料日数へ加えるのは、収穫し、重量と安全を確認してからとした。育っている途中の命を、帳簿だけで先に食べない。
種芋十八個には番号を付け、切り分けて数を増やさなかった。切断面から腐敗する危険と、病気を複数区画へ広げる恐れがある。芽を上へ向ける深さも畝ごとに変え、植えた日と重量を記録する。食用在庫から減った十八個も帳簿へ反映した。
その日の終わりには、働いた人数だけでなく、休んだ人数、枯れた苗、使わなかった資材も記録した。何も増えなかった一日を失敗として隠せば、収穫予測だけが現実より先へ進む。
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