地下にない朝
【本文】
農業区画の照明は明るさを一定にできたが、朝焼けも曇りも夜の冷え込みもなかった。
世界の声は二十四時間点灯で成長加速を勧める。文は苗の葉が閉じる時刻を観察し、十六時間点灯、八時間消灯から試す。
作業表には、担当者、代行者、使用した水と電力、翌日の確認時刻を記す。働けない者の配給を減らさず、農業班だけへ補助食や権限を集めない。
照明電力を増やせば医療と井戸の蓄電が減るため、白い反射板で光を回す。区画ごとに温度差も作り、全苗を同じ条件へ賭けない。
農業区画へ入る者は靴底を洗い、地上土と血獣粒子を混同しない。採取物には場所と時刻を付け、正体不明の土や水を広い区画へ一度に入れない。
世界の声の予測は参考記録として保存するが、地上の測定と一致するまで在庫や安全判定には使わない。失敗した区画も消さず、原因を次の畝へ渡す。
地下の畑に必要なのは太陽の代用品ではなく、休む夜を含む周期だった。
成果を食料日数へ加えるのは、収穫し、重量と安全を確認してからとした。育っている途中の命を、帳簿だけで先に食べない。
消灯中も非常灯が点けば植物には完全な夜にならない。畝の上へ遮光布を掛け、温度計と湿度計は外から読む。反射板の角度は一度に変えず、葉焼けや徒長が出た区画を比較する。照明係にも夜勤を置かず、自動タイマーを二人で点検した。
その日の終わりには、働いた人数だけでなく、休んだ人数、枯れた苗、使わなかった資材も記録した。何も増えなかった一日を失敗として隠せば、収穫予測だけが現実より先へ進む。
(次話へ)




