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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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五人目の枠

【本文】

 扉には触れず、湊たちは山を下りた。

 交番へ届けると、巡査は二人の話を疑わなかった。最近、同じ山域で方位磁針が狂うという通報が三件あったらしい。ただし県道から外れた斜面は私有地で、確認は翌日になると言われた。

 帰宅した湊は、母の千鶴に叱られた。危険な場所へ入らなかった点だけは褒められたが、夕食中も妹の結衣が「秘密基地だった?」と目を輝かせている。

「秘密なら、立入禁止なんて書かないだろ」

 笑って答えた直後、スマートフォンが震えた。

 送り損ねたはずの位置情報に、見覚えのない返信が届いていた。

『入場候補者 二名確認。残余枠 三』

 差出人は空欄。削除しようとすると、文字は画面から浮くように消えた。

 湊は岳へ電話をかけた。向こうも同じ通知を受け取っていた。

「二人で行く気はない」

『分かってる。明日、学校で朔に見せよう』

 翌朝、久世朔は話を聞くなり、昼休みに古いタブレットを持ち出した。通信履歴を調べても受信記録はない。水瀬小春は眉を寄せ、まず大人へ知らせるべきだと言った。

「知らせた。今日、確認に行くはずだ」

 放課後、交番へ寄ると、巡査は困った顔で首を振った。教えられた場所には階段も鉄扉もなかったという。写真も撮ったが、斜面しか写っていない。

四人は顔を見合わせた。

冗談だと言う者はいなかった。

 その瞬間、全員のスマートフォンへ同時に文字が浮かんだ。

『入場候補者 四名確認。残余枠 一』

 小春が青ざめる。まだ入口へ近づいてすらいない。それでも何かは、話を聞いた二人を新しい候補として数えていた。

(次話へ)

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