表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/360

立入禁止の向こう側

【本文】

 六月最後の日曜日、雨宮湊は群馬の山道で、昨日までなかった鉄扉を見つけた。

 町内清掃の帰りだった。舗装の切れた先、落石防止柵の裏に、濡れていない灰色の階段が地下へ続いている。入口を塞ぐ鎖は赤錆びているのに、掛けられた札だけが新品のように白かった。

『立入禁止』

 印刷された四文字の下に、管理者名も連絡先もない。

「役場の工事じゃないな」

 後ろから榊原岳が覗き込んだ。自転車の荷台には、清掃で拾った空き缶の袋が積まれている。

 湊がスマートフォンの地図を開いても、そこには斜面しか表示されなかった。電波は立っている。だが鉄扉へカメラを向けると、画面だけが細かな砂嵐に覆われる。

 岳が足元の泥を指した。人の靴跡はない。代わりに、三本指の小さな跡が扉の前で途切れていた。

「警察に電話するか」

「その前に位置だけ送る」

 湊は家族のグループへ現在地を送信した。送信済みの表示は出たが、地図には山の麓が示されている。実際の場所とは二キロ近くずれていた。

風が止んだ。

山鳥の声も、沢の音も消えた静寂の中で、鉄扉の向こうから、硬いものを引きずる音がした。

湿った落ち葉だけが靴底へ貼りつき、二人が動くたび不自然なほど大きな音を立てた。

 鎖は触れていない。それでも錠前がひとりでに外れ、濡れた土へ落ちた。

 扉が指一本ぶん開く。奥から流れてきた空気は、六月の山とは思えないほど冷たかった。

 湊は階段の闇を見た。見つけたことを後悔するには、まだ何も起きていない。なのに胸の奥では、帰れるうちに帰れと何かが繰り返していた。

(次話へ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ