権限を分ける紙
【本文】
四十八時間後、湊はすぐ管理席へ戻らなかった。
封鎖率九十六%という数字だけを見れば、災害は終わったように見える。だが避難所では、食事、水、薬、睡眠、葬送が一日も止まらない。
入口、医療、水、食料、燃料、通信、迷宮循環を七つに分け、担当者二人と代行者を決める。湊は全体の緊急停止だけを持つ。
記録には成功と失敗を分けず、時刻、担当者、中止条件、翌日へ残る負担を書く。作業できない者の配給を減らさず、代行者だけへ負荷を集めない。
判断が衝突した場合は所有者命令で上書きせず、生命危険、設備損傷、物資損失の順で中止条件を適用する。
世界の声は早い回復や所有権交換を勧めたが、町は即決しない。本人同意、地上の手順、再検査を先に置く。
《分配》で力を渡す前に、紙と手順で決定権を渡す仕組みができた。
代表会議は結論だけでなく、分からない点と見直す時刻も掲示した。勝利の後だからこそ、疲労を勇気、沈黙を同意、空欄を余裕に読み替えない。
設備と人間のどちらかを使い潰して日数を延ばす方法は選ばなかった。
七つの担当表には、できることだけでなく、単独ではできないことを書く。奈々は水門を動かせても患者配分を決めない。由香は医療停止を命じられても迷宮所有権を変えない。担当間の境界を弱点ではなく、互いの暴走を止める安全装置として掲示した。
変更後の担当者は、実行したことだけでなく、見送った作業と理由も次の交代へ伝えた。誰かが戻れば元どおりになる暫定措置ではなく、その人が不在でも続く手順として試す。
全員が署名した。
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