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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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第二迷宮の移動

【本文】

 青い光は一般の人には見えていなかった。

 湊たちが現場へ着くと、消防車の赤色灯だけが暗い駐車場を照らしている。地盤沈下した建物の周囲には規制線が張られ、近づくことはできない。

 朔のアンテナが示す発信源は、そこから東へ移動していた。

 四人と鉄平は車で追った。数字は用水路、歩道橋の下、閉店したスーパーの搬入口へ順に現れ、見るたび『2/3』のまま点滅する。

「先に二人入ってる」

 小春が言った。

 候補者なのか、迷い込んだ一般人なのかは分からない。第二迷宮が入口を変えながら二人を運んでいるなら、残り一枠へ入らなければ救助もできない。

 発信源は市立図書館の駐車場で止まった。

 返却ポストの裏に、地下へ降りる非常階段が出現している。白い数字は『2/3』。警備員には階段が見えず、湊たちが不審な場所を覗いているようにしか映らない。

 岳はまだ医師から運動を止められている。小春は救護のため必要。朔は位置追跡を続けなければならない。

「俺が入る」

 湊は鉄平へ第一迷宮の所有権を一時委任できるか試した。入口の開閉だけは許可できたが、核の操作は渡せない。

 モモが湊のリュックから顔を出す。

『なか、ふたり。こわい』

 中に二人いることを、モモは知っていた。

湊は帰還時刻を一時間後に決め、無線機と救急箱を持った。数字へ手を伸ばす。

鉄平はロープの端を湊の腰へ結んだが、階段へ触れた部分から輪郭が薄くなった。迷宮が閉じれば切断される。最後は結び目を解き、地上側へ同じ長さのロープだけを残した。

『第三入場者を確認』

 非常階段が開き、湿った紙の匂いが流れ出した。

(次話へ)

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