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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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核を壊さない勝利

【本文】

 中央討伐隊は、封鎖率五十八%を成果と認めなかった。

 倉橋は核が残る限り再発すると主張し、夜明けに突入すると通告する。湊たちは観測映像、井戸粒子、動物同調の低下、空槽容量を示した。

 議論中、試験場地下から輪郭のある咆哮が響く。壁が割れ、角と肉塊のような影が一瞬だけ現れた。

 隊員が銃を構える。倉橋は撃てと命じかけたが、黒膜の背後に《隔離核》の保守文字を見つける。

 相馬が中央命令書には隔離核破壊の許可がないと指摘した。討伐対象と施設核が同一なら、現場判断で撃てない。

 倉橋は射撃を保留し、六時間だけ循環試験を待つ。

 湊は勝ったとは思わない。命令の穴を使って時間を買っただけだ。

 夜明け前の二回目運転で封鎖率は七十一%へ上がり、角の影は黒膜の奥へ戻った。

 核を壊さないことは、何もしないことではない。撃たずに済む状態を、記録と設備で作る戦いだった。

 角の影を見た住民はいないが、銃声と咆哮は旧小学校まで届いた。佳乃は討伐開始と断定せず、建物内待機と次の連絡時刻を伝える。体育館では井戸水の搬出を止め、病院は黒線患者用の区画を一床空けた。封鎖班だけでなく、外側の三施設も同じ六時間を使って備えた。倉橋は保留命令へ自分で署名し、相馬は理由を併記する。後で中央が消しても、現場で撃たなかった判断が双方の記録に残るようにした。

 六時間の猶予中も排水圧は上がり続けた。封鎖班は休息を交代で取り、全員が画面を見続けない。

 討伐隊の待機者にも水と休憩を与えたが、町の配給在庫とは分けた。角の影を敵確定の写真として外部配信せず、隔離核の文字を含む全体映像を県庁へ送った。六時間後に撃たない判断を再確認できる証拠にした。

(次話へ)

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