排水を止める
【本文】
第一班は閉鎖試験場の下流百二十メートルで排水管を掘り出した。
管は黒膜に覆われ、四秒ごとに膨らむ。完全に切断すれば中身が土へ溢れるため、奈々は前後を同時に挟む二重弁を設計した。
ゴーレムが上流側を押さえ、人間班が下流へ沈殿容器を接続する。黒粒子は圧力を失うと、管の内側を試験場へ逆流し始めた。
世界の声は《冠位個体への治癒行為》と警告する。流出を戻すことを、敵への回復として罰点に変えている。
湊は警告を無視した。
弁を半分閉じた時、作業員一人の首筋に黒線が出る。中止条件は一つだが、小春は即座に交代させ、洗浄区画へ送った。人数を減らして続行する。
二重弁が閉じると、体育館の沈殿槽へ流れ込む粒子が半分になった。
成功印は付けない。管内圧が上がり、別の亀裂へ逃げる可能性がある。奈々は圧力計を二つ残し、三十分ごとの監視を地上班へ渡す。
一本目は切れたのではなく、監視できる細さまで絞られた。
交代した作業員の黒線は洗浄後に薄れたが、医療観察を六時間続ける。本人が戻れると言っても同じ班には復帰させない。二重弁の手動解除鍵は奈々と地上監視者が一本ずつ持ち、湊の命令だけでは全開にできない。中央隊にも弁の位置は示すが、操作手順は共同立会いなしで渡さない。圧力上昇時は設備を守るより下流を退避させ、あふれた粒子は冷却容器へ受ける。封鎖の成果より、壊れた時の逃げ道を先に残した。
地上監視班は夜勤二時間交代とし、圧力計の数値を写真でも残す。異常なしの時刻も空欄にしなかった。
解除鍵の所在も毎回引き継いだ。
(次話へ)




