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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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四本の血管

【本文】

 血獣群体を町から切り離す計画は、四本の線に分けられた。

 試験場の排水、体育館井戸へ届く地下水、動物を揃える地面振動、黒粒子を運ぶ家畜と野生獣。どれか一本だけを止めても、残りが迂回路になる。

 奈々は排水と水脈、小春と文は動物、朔と鉄平は振動を担当する。湊は《分配》の使用禁止が明けたが、全班へ能力を配らない。通信と帰還判断だけを担う。

 封鎖は三日間。第一日は地上経路、第二日は地下、第三日に試験場外周を閉じる。本体へ攻撃はしない。

 地域網、体育館、旧小学校、病院の生活班は別に残す。戦力を集めるため水質検査や配給を止めれば、血獣より先に避難所が崩れる。

 参加者には中止条件を書いた札を渡した。黒線、六秒より速い耳鳴り、通信断、帰還線の汚染。二つ重なれば作業を捨てて戻る。

 世界の声は《冠位討伐隊を編成しますか》と尋ねた。

 湊は《いいえ》を選ぶ。

 これは獣を倒す隊ではない。町へ伸びた四本の血管を、一つずつ止血する作業だった。

 班ごとの通信が切れた場合、他班が救助へ向かう規則にはしなかった。まず定時刻まで待ち、予備回線、音響札、帰還地点の順に確認する。焦って担当区域を空ければ、四本全てが崩れる。作業員の家族にも予定と中止条件を説明し、帰還が遅れても独自に山へ入らない連絡先を渡した。配給班は三日分の携行食を別在庫にせず、使用した分を毎晩町の帳簿へ戻す。封鎖班だけが優先される制度にはしない。

 各班の出発と帰還は、家族ではなく記録担当が確認した。戻らない時も身内だけに探させず、町の手順で判断する。

(次話へ)

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