地図にない入口
【本文】
朔は青い結晶から出る雑音を三日間記録した。
音は十二分ごとに強くなり、向きを変えると僅かに波形がずれる。冬一が古い指向性アンテナを組み、町内の高台三か所で測ると、第一迷宮とは別の発信源が北東にあると分かった。
「距離は七キロから九キロ。山じゃなく、市街地側だ」
候補範囲には廃業したボウリング場、用水路、資材置き場がある。湊たちは大人と二人一組になり、外から調べることにした。
湊と千鶴が向かったのはボウリング場だった。駐車場は雑草に覆われ、建物の窓には板が打ちつけられている。所有者は県外におり、立入禁止の看板も古い。
青い結晶を近づけると、裏口のシャッターに白い数字が浮かんだ。
『0/3』
千鶴には見えない。湊が手を握ると、数字は『1/3』へ変わり、母にも見えるようになった。
「三人までという意味かしら」
「第一迷宮より小さいのかもしれない」
シャッターの隙間から冷気が漏れている。だが無断で入れば、迷宮以前に不法侵入だ。
二人は位置を記録し、建物へは触れずに戻った。
千鶴は周辺の住宅と避難できる空き地も地図へ書き込んだ。もし入口が突然開いても、攻略だけでなく近隣住民を逃がす動線が必要になる。湊にはなかった生活者の視点だった。
夕方、別方向を調べていた岳たちから連絡が入る。用水路の下にも、同じ数字があったという。
一つの信号に二つの入口。
朔が波形を重ねると、発信源はさらに東へ動いていた。
「入口が移動してるんじゃない。俺たちが見てる数字が、同じ何かを追いかけてる」
その夜、ボウリング場は原因不明の地盤沈下で半分が地下へ沈んだ。
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