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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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迷宮の値段

【本文】

 翌日、湊は鉄平と環を伴って第一迷宮へ戻った。

 入口は所有者が許可すると大人にも見えた。だが六人目になった千鶴が近づくと、鉄扉は岩肌へ変わる。収容上限は単なる表示ではなかった。

 内部の子獣は復活していない。守護核の部屋も静まり返っている。鉄平は柱と壁を調べ、人工物に似ているのに継ぎ目も溶接跡もないと首を捻った。

 環は小部屋に残った黒い根を採取した。切り取った瞬間は動いたが、密封袋へ入れると灰になった。

湊が迷宮核へ触れると、ポイントで利用できる機能が一覧になった。

照明一、扉二、飲料水一日分、簡易寝台。どれも安くない。三百二十ポイントでは、十人分の生活を一週間維持することすらできない。

食料の項目には交換不可と表示された。核が作れるのは水や単純な構造物までで、米や野菜、薬を無から生む力はない。必要なものは地上で集め、運び、管理しなければならなかった。

「何もない空間を家と呼ぶには、足りないものが多すぎるな」

 鉄平は配線を通せそうな溝を測り始めた。迷宮に作らせるのではなく、地上から資材を運べばポイントを節約できる。

 環は空気の清浄度を測った。菌や埃は少ないが、長時間滞在の影響は不明。モモの治癒があるからといって医療設備を省くこともできない。

 湊は十ポイントを使い、入口近くに一枚の扉を作った。

 石壁が滑らかに盛り上がり、金属に似た板へ変わる。鍵を掛ける意識だけで開閉できた。

『初回建造を確認。《領域編集》を付与します』

 再びあの声だった。

 扉の向こうで、低い鼓動が一度鳴る。消費した十ポイントがどこから来た力なのか、湊は急に分からなくなった。

(次話へ)

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