五人しか入れない
【本文】
通知を聞いたのは、工場にいた十一人のうち湊を除く十人だった。
モモだけは作業台の下へ隠れ、震えている。湊が所有者の感覚を開くと、第一迷宮の情報に新しい項目が増えていた。
『避難候補十名。現在収容上限五名』
攻略へ入れる人数と、安全に滞在できる人数は同じだった。湊を含めれば、残りは四人。家族だけでも入りきらない。
「合体すれば広がる、と表示されてる」
迷宮核の情報には、他の核を取り込む融合機能があった。必要なポイントは足りない。そもそも、どこに次の迷宮があるかも分からない。
鉄平が湊の肩を叩いた。
「全員を入れるために、明日また山へ行く。そういう顔をするな」
図星だった。
千鶴は紙へ全員の名前を書き、持病、年齢、移動能力を横に記した。結衣の喘息、冬一の高血圧、岳の負傷。もし今夜災害が起きたら、誰を入れるかを決めなければならない。
「順番を決めるのは、見捨てるためじゃない。迷わず助けるため」
給食センターで避難訓練を重ねてきた母の声だった。
候補順位は結衣、冬一、岳、環となった。湊は所有者として内部に残る。千鶴たちは地上で入口を守る。
紙に書かれた順番は暫定であり、体調や状況が変われば必ず組み直すと全員で確認した。
結衣が唇を噛んだ。
「私が元気なら、お母さんも入れる?」
誰もすぐには答えられなかった。
モモが作業台へ這い上がり、結衣の手へ触れる。淡い光は出ない。ただ寄り添うように丸くなる。
湊は収容上限の表示を閉じた。
次の迷宮を探す理由は、強くなるためではなく、五人という数字を家族より大きくするために決まった。
(次話へ)




