大人たちの沈黙
【本文】
整備工場のシャッターが閉められた。
集まったのは湊の母・千鶴と妹の結衣、岳の両親、小春の母・環、朔の祖父・冬一だった。四人は入口を見つけてから帰還するまでを順番に話した。
最初に口を開いたのは環だった。
「治療した生き物を見せて」
湊が作業台へモモを置く。環は手袋を着け、体温計や聴診器を近づけたが、どれも正常な値を示さない。モモは魚肉ソーセージを受け取ると、岳の腕へ這い寄り、傷跡の上で淡く光った。
千鶴は息子を叱らなかった。代わりに、結衣の肩を抱く手へ力を込めた。
「入口は閉じたのね」
「俺が開けようとしなければ見えない。たぶん」
「たぶんで済む場所じゃないでしょう」
その一言で、湊は何も返せなくなった。
冬一は五台の無線機と受信記録を確認した。地上との通信はないのに、存在しない五人目の音声だけが残っている。青い結晶をラジオへ近づけると、使われていない周波数に一定間隔の雑音が入った。
雑音を録音した冬一は、同じ間隔が続くのは自然現象らしくないと言った。朔は元データを三つの記録媒体へ複製し、一つを工場の耐火金庫へ収めた。
鉄平は壊れた工具を机へ並べた。
「警察へ全部渡す。ただし、入口が俺たちに見えないなら、証拠だけ没収される可能性がある」
大人たちは長く話し合った。
結論は、子どもだけで二度と入らないこと。入口の監視を大人が交代で行うこと。証拠を複製し、信頼できる相手へ段階的に相談することだった。
湊は約束した。
その直後、工場の全員に声が聞こえた。
『第一迷宮の関係者を十名確認。避難候補登録を開始します』
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