燃やせない葬送
【本文】
岩田は行方不明のまま、杉沢の死亡者一人は遺体を収容できた。
通常の火葬場は停止し、再稼働には大量の燃料が必要だった。地域網の燃料は十日分。葬送のために使うことを無駄とは言えないが、救急車と発電が止まる。
家族、相馬、由香、安西が選択肢を話し合う。冷却保管、仮埋葬、少量燃料の簡易火葬。侵食粒子があるため、通常の土へそのまま埋められない。
第六迷宮の冷却区画を遺体倉庫にせず、地上の保冷車を修理して一時安置する。燃料は一日二回の冷却運転へ限定し、セレネの冷気を補助に使う。
家族はすぐ燃やすことより、顔を確認して別れたいと望んだ。透明な隔離窓越しに対面し、触れられない理由を由香が説明する。
岩田の家族には遺体がない。帽子と手袋の写真、最後の行動記録を祭壇へ置くか、まだ待つかを選んでもらう。
葬送は一つの形式へ揃えない。
保冷車の燃料は町全体の表へ載せ、葬送用として勝手に削られない区分にした。医療緊急時に再配分する場合は、家族と代表へ理由を説明する。死者と生者を競わせない。
死者を安全上の荷物にせず、生者の燃料も使い切らない。その間で、町は別れの時間を作った。
保冷車の温度は二人が朝夕確認し、故障時の移送先を第六迷宮前の隔離室に限定した。セレネへ遺体を治療対象として認識させず、冷気経路だけを借りる。家族には保管期限を曖昧にせず、七日後に火葬場の燃料と侵食検査を再評価すると伝えた。仮埋葬を選ぶ場合の場所、水源との距離、後の改葬方法も相馬が調べる。急いで形式を決めないことも、放置とは違う記録を残した。
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