沈んだ橋
【本文】
川端へ続く橋は、中央の一本が水面へ沈んでいた。
車両は通れない。歩道も流木が絡み、川の水には黒い粒子が混じっている。
奈々はゴーレムを渡らせず、上流の農業用水路に残る管理橋を調べた。幅は一メートル、手すりは片側だけ。担架を水平に運べない。
川端二十三人のうち、自力歩行できない者は三人。車椅子一人、骨折一人、幼児一人だった。
岳と鉄平は低姿勢ゴーレムへ座席と固定帯を付ける。人を機械だけへ預けず、前後に一人ずつ付き、五メートルごとに停止する。
最初の渡河は荷物だけで試す。重量は人と同じでも、怖がって動く負荷は再現できない。二回目は安西が乗り、揺れ方と手すりの高さを記録した。
夕方までに歩行可能者十二人が渡る。残り十一人は集会所で一夜待つ。
夜の水位を二時間ごとに測り、上流の雨量も県庁へ問い合わせた。残留者には橋へ近づかず、集会所二階で眠るよう伝えた。
急げば全員を運べるという声も出たが、暗くなれば足元の黒粒子を見失う。
管理橋には照明を置かず、夜間通行禁止の札を付けた。
救助を半分で止める判断は、残した人を見捨てるためではなく、明日も渡れる橋を残すためだった。
集会所へ残る十一人には、水と一日分の食料、手動無線、朝までの見守り担当を置いた。担当者も川端の住民から二人、救助班から一人とし、外から来た者だけで決めない。渡った十二人は体育館へ直行せず、橋の北側で靴底と車輪を洗浄した。黒粒子を避難所へ運ばないためである。管理橋の亀裂幅は開始前より二ミリ広がっていた。翌朝の再使用前に、荷重試験をやり直す記録を残した。
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