三つの集落
【本文】
県庁から届いた周辺集落の内訳は、杉沢二十二人、日向十九人、川端二十三人だった。
三集落を合計六十四人として扱えば、全員を一度に運ぶ計画になる。しかし道路も水も危険も違う。
杉沢は公民館に井戸があるが、血獣群体の推定中心に近い。日向は高台で安全だが、寝たきりの住民が二人いる。川端は体育館へ近い一方、橋の一部が沈んでいた。
安西は各集落へ同じ避難命令を出さず、正午と夕方の定時通信を設定する。通信不能時の待機場所、白布と赤布の合図、迎えが来ない場合に進んではいけない道も決めた。
避難先は地域網ではない。空き寝台は一つしかない。体育館、旧小学校、県立病院の三地点へ分け、地域網は水、通信、医療相談、物流を支える。
旧小学校は未使用だったが、校舎の安全確認とトイレ復旧が必要だ。奈々と佳乃が先行する。
受領時刻も全て記録した。
世界の声は《六十四人一括救助》へ高得点を表示した。分散すれば報酬は下がる。
湊たちは一括任務を受けない。人をまとめた方が点になる仕組みに、避難経路を合わせない。
三枚の地図へ、それぞれ違う帰還線が引かれた。
受け入れ可能人数も固定値にはしない。体育館は水が戻っても食料が少なく、旧小学校は寝床があっても医療がない。病院は患者を診られるが生活避難者を置けない。真理は六十四人を年齢や病名で振り分けず、本人の希望、家族単位、移動介助、必要設備を一件ずつ確認する票を作った。返事が来ない人も「未回答」として残し、空いた席へ勝手に割り当てない。三集落には地図と同じ番号の通信票を送った。
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