眠れない見張り
【本文】
血獣型疑いの掲示後、夜間見張りの辞退が減った。
勇気が増えたのではない。自分が休めば町が襲われるという不安で、体調を隠す者が増えたのだ。
佳乃が相談窓口の記録を調べると、三人が二晩連続で当番へ入り、一人は昼の仕事も続けていた。警戒強化が、作ったばかりの休息規則を壊している。
代表会議は見張り人数を増やさず、入口、体育館、井戸の三地点へ絞る。音響札、固定カメラ、警戒粘体の確認時刻をまとめ、人間が常に画面を見続けない方式にした。
赤反応が一つだけなら記録、二地点なら担当を起こす、侵入映像があれば全体警報。段階を決める。
見張り表は七日ごとに見直す。辞退者の名前や回数は公開せず、必要な交代人数だけを代表会議へ報告した。
誠は娘の近くにいたいと夜勤を断った。以前なら入口閉鎖を求めた彼が、今度は規則を使って休む。
深夜二時、警戒粘体が一体だけ赤くなる。見張りはサイレンを鳴らさず、他地点を確認した。動いたのは牛舎の一頭だけだった。
誤警報ではないが、襲撃でもない。記録を残し、朝の巡回へ回す。
眠らない町を作ることは、防衛ではなかった。
朝の交代時、赤反応を見た担当者は判断を誤ったのではないかと謝った。佳乃は、決めた段階どおり確認し、全体警報を鳴らさなかったことを記録する。何も起きなかった夜にも、正しく待った仕事がある。逆に見逃しを恐れて警報基準を下げれば、住民は毎晩起こされ、数日で反応できなくなる。昼間の睡眠区画には清掃時間をずらし、子ども班にも静かな通路を知らせた。夜勤者の休息を、日中の都合で削らない。
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