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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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群れから外す

【本文】

 牛舎の十二頭のうち、一頭が再び山へ向かい始めた。

 首筋の黒線は消えていたが、六秒ごとに耳を動かす。殺さず群れ信号を切る方法を試す必要がある。

 朔は電波遮断布、奈々は振動を吸うゴム床、小春は清浄域を準備した。三つを同時に使うと、牛の歩調が乱れ、餌へ顔を向ける。

 どれが効いたか分からないため、一つずつ外す。遮断布を外しても変化なし。清浄域を止めると耳が動く。ゴム床を外すと山側へ一歩進んだ。

 媒介は侵食粒子と地面の振動が組み合わさっている可能性が高い。

小春は清浄域を長時間維持できず、十分で膝をつく。牛全頭や山全体には使えない。

飲水量も個体ごとに測り、座った一頭だけを回復例として特別扱いしない。十二頭全ての変化を同じ表に残した。

 代わりに牛床へ薄い防振材を敷き、首筋を定期洗浄する。完全遮断ではなく、同調が弱まる時間を増やす。

 世界の声は牛を《従属獣》として所有可能と表示した。登録すれば命令を上書きできるという。

 文は登録しなかった。別の支配へ置き換えて静かにするのではなく、牛が自分で餌と水を選ぶ反応を戻す。

一頭が列から外れて座った。それが初めての成功になった。

防振材は地域網の在庫だけでは全区画分に足りない。鉄平は廃車の床材を再利用するが、油の付着した物は牛床へ使えない。洗浄、乾燥、臭気確認を経て六枚だけ敷いた。残る区画は土を厚くし、振動の伝わり方を測る。清浄域を小春一人に頼らず、首筋洗浄の手順を文と牛舎担当へ渡した。能力がなくても同調を弱められる部分を増やし、緊急時だけ清浄域を使う規則にした。

(次話へ)

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