分配の重さ
【本文】
山側の観測範囲を広げるため、湊は《分配》で朔の反響探査を三人へ分けた。
朔、湊、岳が別の尾根に立ち、同時に六秒周期を測る。能力は薄くなり、細かな方向は読めないが、三点の時刻差から中心を絞れる。
開始十分で湊の耳に痛みが走った。遠い振動だけでなく、仲間二人の呼吸と心拍まで重なる。
岳が中止を告げるが、湊はあと一回と続けようとする。小春が事前に決めた十五分の上限で強制終了した。
分配解除後も、湊は自分の足音と岳の足音を混同した。鼻血が出て、視界の端が脈打つ。
測定結果は得られた。中心は山頂ではなく、閉鎖された畜産試験場の地下付近。しかし湊は次の観測から外される。
本人の同意があっても、能力を貸す側の負荷を無限にはできない。《分配》は人数を増やすほど情報も疲労も戻ってくる。
湊の代わりに音響札を一つ移し、人間の能力を機器で補う。
翌日の当番からも外した。再検査までは入口にも立たせない。
世界の声は《過負荷補正》をポイント交換で提示したが、小春は使わない。症状を消して再び働かせるより、休息と経過観察を選んだ。
湊は八時間、通信と会議からも外された。所有者だから報告だけは聞くという申し出も退けられる。判断を続ければ、感覚の混同が残っているか確かめられないためだ。千鶴が食事を運び、湊は左右の音を一つずつ答える簡単な検査を受けた。夕方には鼻血が止まったが、反響探査の再分配は三日禁止となる。能力台帳へ、三人分配十五分で感覚混線と追記した。成功した測定結果と同じ大きさで、使えない条件も残した。
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