地下の町の規則
【本文】
査察最終日、代表会議は地域網の規則を一枚にまとめた。
一、基礎配給は労働の有無で減らさない。二、追加食は医療、成長、妊娠、重作業など必要量で決める。三、仕事は断れ、代行と休息を用意する。四、事故は個人名だけで終わらせず、設備と手順を直す。五、個人情報は目的ごとに分ける。六、迷宮の所有者は王ではなく設備管理担当である。
戸倉は中央命令より地域規則を優先できないと述べた。湊は、ここで暮らす人の生命を損なう命令なら、影響を記録して代替案を返すと答える。
査察隊は所有者氏名と個人名簿を持ち帰れなかった。代わりに、人数集計、食料二十二日、体育館七日、燃料十二日、医療要請、事故台帳、提供可能な設計図を受領した。
澪の損傷残余は二十七日十八時間。白い繭は維持され、治療を急いで所有権と交換していない。
戸倉は徴発可否を中央で再審査すると告げ、四人ずつ出口を通る。相馬は双方の文書番号を照合してから帰った。
査察が町を認めたわけではない。徴発命令も消えていない。
それでも百四十九人と体育館九十三人は、誰か一人の所有物でも、働いた者だけの集団でもないと、規則と記録で示した。
地下の避難所はこの日、自分たちで直せる町になった。
査察終了後、規則へ住民全員が一斉署名することはしなかった。読めない者、理解に時間が要る者、反対点がある者を置き去りにするからだ。一週間の試行期間を設け、食堂と体育館で毎日説明会を開く。意見箱には匿名でも変更案を入れられる。緊急時だけ先に適用する条項と、話し合って直せる条項も分けた。完成した規則に従う町ではなく、間違いを記録し、規則そのものを直し続ける町。それが第三部の最初に選んだ形だった。
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