十二人の査察隊
【本文】
中央査察隊は予定どおり到着した。
責任者は御厨本人ではなく、再建評議会監査官の戸倉という男性だった。車両は橋を渡れず、十二人が徒歩で白線を進む。
入口前で安西が入場条件を読み上げる。四人ずつ、武器封印、単独行動禁止、無許可撮影禁止。戸倉は公的査察への妨害だと抗議した。
相馬は、地域網の収容上限と橋の荷重検査に基づく安全条件だと記録へ残す。拒否ではなく、同じ項目を守れば入れる。
護衛の一人が武器を預けられないと言う。そこで銃を入口外の車両へ戻し、警棒だけを封印袋へ入れた。地域網側も岳たちの武器を同じ棚へ置く。
最初の四人が入ると、世界の声が《行政戦力の入域》を告げた。警戒粘体が黄から赤へ変わる。
湊は攻撃命令を出さず、全員を停止線で待たせた。警戒粘体の表示は「要確認」であり、「敵」ではない。
戸倉は赤色を見て、迷宮が査察を拒絶したと言う。
異なる解釈を、どちらの原記録からも消さなかった。
朔は過去の誤警報記録と、武装・体温・歩幅への反応試験を示した。
査察は最初の五分から、表示を誰がどう解釈するかの監査になった。
戸倉は自分の端末で赤を撮影しようとしたが、撮影許可区画ではない。朔が止めると、証拠隠しだと反発される。そこで地域網の固定カメラ映像を双方で複製し、撮影時刻と全員の立ち位置を添えた。査察側だけ、地域網側だけの映像にしない。警戒粘体は十分後に黄へ戻った。武器を外へ置き、歩行が落ち着いた変化と一致する。戸倉は敵判定という記述を消さなかったが、相馬が「地域網側は要確認と説明」と併記した。
(次話へ)




