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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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県庁の立会人

【本文】

 相馬遼は査察隊より一日早く、橋の受け渡し地点へ来た。

 中央側から県庁職員一名を立会人に指定されたためだ。命令の補助者にも、地域網の証人にもなり得る立場だった。

 相馬は査察要領を持参する。確認項目は所有者本人、迷宮核十基、収容余力、戦闘個体、食料、燃料。個人名簿の原本閲覧も含まれていた。

 地域網の事前条件と食い違う。

 相馬は要領を隠さず、その場で写しを安西へ渡した。県庁は個人名簿を保管できないと既に回答しており、原本閲覧にも同じ保護条件が必要だと意見書へ書く。

 査察隊は十二人、車両三台。護衛六人は武装している。入口へ全員を通せば、地域網の空き寝台と安全人数を超える。

 湊たちは、立ち入りを四人ずつに分け、残りは体育館の指定区画で待機する案を返した。武器は封印し、入口内では安西が預かる。

相馬は中央が拒む可能性も伝えた。

休息記録には相馬自身が署名し、上司も引継ぎを確認した。

「その時は、拒否した事実も私が記録します」

彼は味方だとは言わない。誰が何を要求し、何を答えたかを消さない役として、査察に立ち会うことになった。

体育館で相馬の健康確認をすると、睡眠は三日で合計九時間しかなかった。由香はそのまま立会いへ入ることを止め、六時間の休息を条件にする。相馬は時間がないと抵抗したが、疲労した証人が番号を取り違えれば記録全体が疑われる。代わりに上司と無線を繋ぎ、休息中の連絡を引き継いだ。行政職員も無限に使える設備ではない。地域網の勤務規則を、外から来た立会人にも同じように適用した。

(次話へ)

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