査察前の掃除
【本文】
中央査察まで二日。
地域網では、通路をきれいにし、壊れた箱を隠そうという提案が出た。整った施設を見せれば、徴発を減らせるかもしれない。
拓郎は反対した。物資が足りているように見せても、不足しているように見せても、実態と違えば後で帳簿が崩れる。
清掃は普段の衛生範囲だけ行い、故障、事故記録、空の棚もそのまま見せる。危険区域は隠すのではなく、理由と入場条件を掲示する。
湊の氏名と寝床、子ども区画、患者原本は査察対象から外す。県庁の相馬へ、見せる資料と見せない資料の一覧を事前送付した。
査察員の安全も準備する。迷宮内では単独行動禁止、冠位個体へ触れない、設備命令を入力しない、撮影は区画ごとの許可制。
長谷川誠は、隠さないなら中央に全部奪われると心配した。安西は、出せない理由と出せる代替を同じ机へ並べると答える。
生活班は待機箱を普段どおり洗い、休息中のスライムを仕事へ戻さなかった。
質問票の写しも共有し、説明担当が変わっても回答が変わらないようにした。
査察のためだけに健康な町を演じれば、査察が終わる前に町の方が壊れる。
資料の説明役にも休憩を入れた。湊だけが全区画を案内すれば、所有者一人で町が動くという誤解を強める。食料は千鶴、水は奈々、医療は由香、体育館は拓郎、生活班は担当住民が説明する。答えられない質問には、その場で推測せず「確認後回答」と書く。査察官が空欄を拒否と解釈しないよう、回答期限と担当者を添えた。見せない資料にも、拒否ではなく目的外、本人同意なし、保管設備不足と理由を付けた。
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