失敗の責任者
【本文】
洗浄用水の弁が閉め忘れられ、貯水槽一つが空になった。
当番表では、担当は体育館から来た若者だった。責任を取らせろという声がすぐに出る。
奈々が現場を確認すると、弁の札は開閉どちらでも同じ向きに見え、夜間照明では色も判別できなかった。交代時の復唱欄もない。
本人は弁を閉めたつもりだった。罰を与えても、次の担当が同じ間違いをする。
奈々は事故記録の責任欄を、人名ではなく「判断」「設備」「確認」「管理」に分けた。今回は設備表示と交代確認が原因。担当者は経過を説明するが、失った水を個人の配給から返させない。
弁には形の違う止め具を付け、閉鎖後に別の一人が流量計を見る。夜勤交代表には指差し確認を追加する。
ただし、故意の破壊や記録改ざんまで同じ扱いにはしない。事実確認、本人の説明、複数代表の判断、異議申立てを必要とする規則を別に置く。
空になった槽の補充で、洗濯用水は半日制限された。失敗の影響は消えない。
失った水量も事故記録から消さなかった。
だからこそ、誰かを責めて終わらず、同じ失敗が起きる場所を直した。
若者本人は作業から外してほしいとは言わず、改良後の最初の確認役を希望した。奈々は一人ではなく別の当番と組ませる。閉鎖の止め具を触り、流量が零になるまで二人で見る。今度は正しく止まった。事故を起こした者が永遠に危険人物になる制度なら、失敗は隠される。再参加には本人の意思、設備改善、監督者の確認を必要とし、成功したことも事故記録の続きへ書いた。記録は罰の名簿ではなく、直した結果まで残すものになった。
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