配給は賃金ではない
【本文】
新しい配給規則を試した昼、運搬班から異議が出た。
重い燃料缶を運んだ者と、座って名簿を整理した者が同じ主食量なのは納得できないという。名簿係からは、記録を軽い仕事と決めつけるなと反発が返る。
千鶴は二つを比べず、必要量を測った。基礎食、医療食、成長期、妊産婦、重作業補助、夜勤補助。重作業班には次の食事で炭水化物と塩分を追加するが、肉や甘味の優先権にはしない。
補助食を受け取る際、仕事の成果を証明する必要もない。担当表と活動時間だけを確認し、失敗した作業でも消費した分は補う。
世界の声は《労働貢献度による配給最適化》を提示した。個人ごとの点数と、上位者への食料増加が表示される。
代表会議は採用しなかった。水漏れを防いだ一時間と、泣く子どものそばにいた一時間を同じ点数で測れない。
訂正した配給数も赤字で残し、翌日の在庫へ確実に繋いだ。
代わりに不足が出た時の削減順を決める。嗜好品、保存可能な予備、成人の一部、副食。乳幼児、患者、必要水分は最後まで削らない。
配給は町で働く資格への賃金ではなく、町で生き続けるための基盤になった。
試験運用では、夜勤補助を二回受け取った者と、受領印を押し忘れた者が出た。千鶴は余分な一食を盗難扱いせず、配布側の確認方法を直す。補助食券は仕事前に配らず、交代終了を確認した窓口で渡す。受け取りに来られない者には区画まで届ける。台帳上の差は、その日の廃棄量と予備棚から調整し、個人へ返済を求めない。制度の初日に起きる間違いを罰で隠せば、次から誰も申告しなくなる。
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