働けない欄
【本文】
仕事の希望票には、最初から「参加できない」という欄があった。
病気、怪我、妊娠、育児、介護、夜勤後、心身の疲労。理由を書きたくない者は、期間だけを記せばよい。小春と由香が医療上の制限を本人同意の範囲で確認する。
掲示された仕事は、調理、清掃、運搬、見張り、水、子ども区画、記録、スライム世話、修理。体力仕事だけが町を支えているわけではない。
それでも、働かない人と同じ配給なのは不公平だという不満が出た。
千鶴は基礎配給を全員同じ権利として分ける。年齢、病気、乳幼児、アレルギーに必要な調整は医療と栄養で決める。重作業や夜勤で増えた消費分は、褒美ではなく補給として追加する。
仕事の肩書で食事量は増えない。
募集条件も住民全員へ公開した。
岳が運搬を六時間続けたいと申し出ると、鉄平が二時間ごとの交代へ戻した。若くて動ける者を使い切れば、翌日の担い手が減る。
希望票は一週間ごとに書き直せる。今日できた仕事を、明日も義務にはしない。
「参加できない」欄へ印を付けた最初の一人は、完全停電訓練で膝を痛めた男だった。配給票は何も変わらなかった。
その日の午後、希望者が多すぎる清掃班と、誰も希望しない夜間ごみ搬出が判明した。抽選で押しつけず、時間を短くし、二人一組と翌朝免除を付けて再募集する。それでも埋まらなければ代表自身が交代で入る。仕事を必要だと言う側が、条件を直さず命令することはできない。担当表には氏名だけでなく、作業時間、必要装備、危険、代行者、終了後の休息まで書くことになった。
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