所有者は王ではない
【本文】
中央命令の後、地域網の中でも湊を見る目が変わった。
所有者なら代表として登録を決めるべきだという者と、未成年一人に全員の住所を握らせるなという者が現れた。どちらも、湊が既に名簿を自由に扱えると思っている。
湊は食堂で、第一迷宮の管理画面を公開した。
できるのは入口、空気経路、避難通路、設備接続の調整。個人の陣営や過去を読む機能はなく、収容者名簿も真理たちが地上の用紙で管理している。
「所有者は王様じゃない。壊れた時に止める場所を決める担当だ」
岳が、湊一人を捕まえても地域網は動かせないと補足した。水は奈々、医療は由香と小春、物流は拓郎とオルド、炉は鉄平が手順を持つ。
代表会議は《所有者》を外部向け文書で《迷宮設備管理担当》と言い換える。権限一覧と、本人だけでは決められない事項も添付する。
湊の氏名は県庁の相馬一人へ暗号化した紙で預け、中央データベースには仮番号を登録する案がまとまった。
名前を隠して責任まで消すのではない。責任の範囲を正しく狭め、必要な相手にだけ繋ぐ。
湊は自分が特別だから守られるのではなく、誰の情報にも同じ規則を使うことを条件に、その案へ同意した。
会議後、湊は母の千鶴へ、自分の名が県庁には渡ると伝えた。千鶴は反対しなかったが、家族全員の情報まで付けないことを確認する。所有者の身元確認に、母の職歴や妹の居場所は必要ない。家族だから一組の情報として扱われがちな項目を切り離す。湊自身の同意書にも、用途は本人確認、保管者は相馬と上司、中央転送不可と明記した。
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