橋の手前で渡す
【本文】
物資の受け渡し地点は、崩落した県道橋の手前に決まった。
県庁側の車両は南から、地域網側は北から来る。橋は車で渡れないが、歩道部分を点検すれば人と小荷物は通せる可能性がある。
安西、岳、奈々、病院の薬剤師が向かった。湊は所有者だと特定される危険を避け、地域網に残る。
奈々の確認では、歩道の床板も二か所浮いていた。ゴーレムへ先に歩かせず、荷重を変えた砂袋で試す。安全な場所へ白線を引き、一人ずつ渡る規則にした。
南側へ現れたのは県職員二人と消防隊員三人だった。相馬は防護具の上から身分証を掲げ、箱の封印番号を読み上げる。
薬剤師が薬の名称、期限、保管温度をその場で照合した。軽油は容器ごと計量し、受領量七十九・六リットル。数字の差も丸めず記録する。
相馬は所有者に会わせてほしいと言わなかった。代わりに、中央の登録命令が三日後に強制形式へ変わる可能性を伝える。
帰路、岳は物資より重い警告だと言った。
安西は頷き、橋の白線を振り返る。行政との道も同じだった。渡れる幅を測らず、一度に全員で進めば崩れる。
帰る前、双方は空箱にも封印を付けた。次回、地域網から検査器具や文書を渡す際に、途中で中身を足されていないと確認するためである。相馬は県庁の通信が途切れた場合の時刻も決めた。毎日正午、橋の南側に白布があれば文書あり。赤布なら道路危険。無線だけへ頼らない連絡線だった。岳は北側にも同じ印を準備すると約束した。
橋を使うたび、床板の亀裂幅も測る。昨日通れたことを、今日の安全証明にはしなかった。
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