支援できる物の表
【本文】
県庁から二通目の通信が届いた。
提供可能なのは抗菌薬二種、透析患者の搬送枠一名分、軽油百二十リットル、乾電池四箱。全て同じ場所には運べず、受け渡し地点まで取りに来る必要がある。
期待より少ないという声が会議に出た。
だが相馬の添付表には、県内十七避難所から届いた要請と残量が並んでいた。県庁も余った物資を隠しているわけではない。
由香は抗菌薬の種類を確認する。一方は必要な患者に合うが、もう一方は代替薬としても使えない。数だけ受け取れば、別の避難所から薬を奪うことになる。
燃料も百二十リットル全てを求めず、救急搬送二往復と発電三日分に必要な八十リットルを申請した。残る四十リットルは道路の向こう側へ回してもらう。
地域網から提供できる物も表へ加える。井戸濾過の設計図、簡易水質検査手順、警戒粘体を使わない見張り交代表。迷宮そのものを渡せなくても、地上で再現できる知識は送れる。
朔は全ての表へ日時と作成者を記した。明日には在庫も道路も変わるためだ。
支援は多い側から少ない側へ流す施しではない。互いに今出せる物を、危険と期限つきで並べる作業になった。
県庁へ返した表には、受領できなかった時の影響も添えた。抗菌薬がなければ六人全員がすぐ死亡する、と大きく書くのではない。代替薬が使える二人、経過観察できる一人、四十八時間以内に必要な三人へ分ける。声を大きくした要請が勝つ仕組みにしないためだった。相馬からは、他施設の緊急度も同じ書式へ直すと返信が届いた。支援表は毎朝必ず更新された。
表は残る。
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