灯りが減っても
【本文】
世界公開から十日が過ぎた。
地域網の生活照明は、公開前の六割まで減っている。体育館井戸は濾過と煮沸を条件に稼働し、地域網から送る水量は半分になった。
燃料は十四日分。食料は地域網二十五日、体育館九日。数字は改善だけでなく消費によって動き続ける。
生活スライム班は、清掃、濾過、冷却、警戒を人間と一緒に担当する。誤作動と事故記録も毎日増えている。
代表会議では、入口閉鎖を求める声が以前より減った。水と電気の使用量が見え、地上避難所が一方的な負担ではなくなったためだ。それでも空き寝台は一つしかない。
夜、食堂の照明が予定どおり消える。
子ども区画へ続く床の小さな灯りだけが残り、清掃粘体が待機箱へ戻っていく。結衣は担当個体の濁りがないことを確認した。
暗さは崩壊の印ではなく、明日も医療と水を動かすための選択になった。
その頃、県庁から安西宛てに初めて正式な通信が届く。
『地域隔離施設の所有者情報と、収容者名簿の提出を求める』
県庁からの通信には提出期限も法的根拠も書かれていない。名簿には患者、子ども、陣営保留者の情報が含まれる。安西は即答せず、送信元、利用目的、保管方法、現場支援の内容を問い合わせた。行政との連携は必要でも、避難者の情報を条件なしに渡すことはできない。代表会議を開くまで、施設概要と収容人数の概数だけを返す方針にした。
体育館側にも同じ通信を共有し、拓郎から意見を集める。地下だけで県庁への返答を決めない。
県庁の求めが支援への入口か、管理の始まりかはまだ分からない。湊たちは拒絶も服従も選ばず、質問と記録を返すことから始めた。
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