音のない警報
【本文】
警戒粘体は、入口付近の振動を色で知らせる。
青は人間、黄はゴーレム、赤はモンスター。無線が届かなくても変色で分かるため、体育館と病院へ二体ずつ配置された。
深夜、体育館の一体が赤くなった。
見張りはサイレンを鳴らそうとしたが、拓郎が止める。避難者を起こす前に、もう一体と外の監視カメラを確認する。
二体目は青。映像には、赤い毛布を被った住民が入口へ近づく姿が映っていた。警戒粘体は色そのものを敵と誤認した可能性がある。
住民は家族を探して歩いてきた。怪我はなく、体育館へ保護される。
誤警報を隠さず、赤い物、強い振動、発熱体で反応が変わるか試験する。結果、色ではなく体温と歩幅の組み合わせを見ていると分かった。
世界の声が説明した分類を、人間が色として解釈しただけだった。
警戒粘体の表示札を「敵」から「要確認」へ変える。
赤くなったら戦うのではない。二つ以上の手段で確認し、人間が判断する。
音のない警報は、命令ではなく最初の気づきとして使われることになった。
住民が来た方向には、実際に影獣がいる可能性も残る。保護後、本人から通った道と見た物を聞き、消防地図へ記録した。誤警報だったから外の確認まで不要とはしない。赤い毛布は反応試験用に別の入口でも使い、個体ごとの差を調べる。一体の反応を全ての警戒粘体の性質だと決めつけず、配置ごとに基準を作った。
警報を確認する見張りも一人にせず、深夜は二時間交代とした。眠気による見間違いをスライムの誤作動にしない。
交代時には直前の反応を必ず口頭で引き継ぐ。
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