清掃班の失敗
【本文】
生活スライム班の最初の仕事は、食堂裏の排水路清掃だった。
人間三人と清掃粘体四体。経路へ丸印を置き、汚れを回収箱まで運ばせる。
開始十分で、一体が排水口へ入り込んだ。奥の油汚れを追い、戻れなくなったのである。
世話係が棒で引き出そうとすると、体が裂けかけた。湊は《領域編集》で排水路の側面を開き、粘体を回収する。
体は黒く濁り、動かない。モモの治癒を使わず、清潔な水と待機箱で休ませた。二時間後、ようやく薄い色へ戻る。
失敗の原因は、スライムが命令へ逆らったことではない。「奥まで汚れを取る」という曖昧な印だった。
経路の終点へ壁を置き、汚れが残っても越えさせない。人間が最後に点検し、届かない場所は器具で清掃する。
作業時間も二十分から十分へ短縮した。
清掃効率は下がった。それでも一体を使い潰すより長く続く。
事故記録には、助けた湊の名より、間違った指示を作った人間側の改善点が大きく書かれた。
待機箱にも問題が見つかった。汚れを吸った個体と休息中の個体を同じ箱へ入れると、汚れが移る。清潔、作業後、要観察の三つへ分け、蓋の形も変えた。子どもの世話係が間違えないよう、文字だけでなく凹凸の札を付ける。事故に遭った個体は番号と時刻を記録し、元気に見えても一日作業へ戻さないことにした。
事故写真は責任追及のためではなく、同じ排水路へ別の班を入れないため共有した。待機箱の位置も図面へ加える。
翌朝、回収された個体は餌へゆっくり近づいた。世話係は喜んだが、作業復帰の印は付けなかった。回復したように見えることと、安全に働けることは別だからだ。小春が体積と反応速度を測り、平常値へ戻るまで観察を続ける。班全員が、その判断を待った。
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