スライムの仕事
【本文】
生活区画で働くスライムは、六種類に増えていた。
清掃、運搬、冷却、保温、濾過、警戒。どれもCランク未満で戦闘力は低い。人間の言葉は理解せず、決められた印と経路を覚える。
問題は、用途の混同だった。
床を掃除した清掃粘体が、そのまま調理場へ入り、食器を包もうとした。冷却粘体は発熱患者へ集まりすぎ、体温を下げかけた。
小春が止め、区画ごとに個体を分ける。体の色へ頼らず、胸に形の違う札を埋め込む。丸は食堂、三角は医療、四角は床清掃。
命令を増やしすぎても混乱する。一個体につき仕事は二つまで。経路を外れたら、近くの待機箱へ戻るよう教える。
避難者の中から世話係を募った。餌となる低濃度ポイント、休ませる時間、体の濁りを記録する。
モモは話せるため、他のスライムの代表にはしない。モモだけが賢い理由はまだ分からず、同じ反応を期待すれば個体を壊す。
生活スライムは便利な道具ではなく、仕事を覚え、間違え、休ませなければならない生き物として台帳へ登録された。
運搬粘体は、重い箱を一体へ任せると途中で平たくなった。二体で挟む印を作り、重量ごとの必要個体数を決める。冷却粘体も連続使用で体が白く濁るため、予備と交代させた。能力値だけでは見えない疲労を、色、体積、動きの速さで記録する。仕事を終えた個体は餌を与える前に休ませ、濁りが消えなければ翌日も使わない。
班は仕事開始前と終了後に個体数を数える。小さな個体が排水路や荷箱へ残っていないか、人間が最後に確認する。
世話係自身の疲労も同じ記録へ加えた。
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