洗う水、飲む水
【本文】
水源が増えると、別の問題が起きた。
井戸水を飲用へ回したい人と、洗濯や清掃へ使いたい人が同じ容器から汲み始めた。煮沸済みと未処理の区別も、暗い体育館では色だけで分かりにくい。
拓郎は容器の形を変えた。飲用は細口、調理用は取っ手付き、洗浄用は四角。目が見えにくい人でも触れば判別できる。
使用量を制限すると、子どもの服を洗いたい母親から不満が出る。衛生を守る洗濯まで贅沢にはできない。
由香は感染対策に必要な水量を示し、優先用途を飲用、医療、調理、手洗い、洗濯、床清掃の順に固定しなかった。感染症が出れば洗濯と清掃の順位が上がる。
毎朝の水質と患者数によって、配分表を変える。
井戸担当は体育館側から四人選び、奈々の指示で濾過材を交換する。地域網から水を送る量は半分になった。
余った物流枠へ、食料と医療品を載せられる。
水を得たことで体育館が自立したのではない。自分たちで測り、配り、設備を直す仕事を持ったことで、支援の一方通行から離れ始めた。
配分表には、洗浄用を減らしたことで発生する別の負担も書いた。食器を洗えなければ使い捨て容器が増え、ごみ処理が必要になる。洗濯を減らせば皮膚病や感染の危険が上がる。水を節約した量だけで成功とせず、翌日の医療記録と廃棄量を一緒に確認する。少ない水を使うために、別の資源を無駄にしない方法を探した。
水を運ぶ担当者にも休憩を設定し、重い容器はゴーレムと二人で扱う。腰を痛めても水量表には現れない。
配給所には、今日どの水を何に使えるか大きく掲示した。
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