消える照明
【本文】
地域隔離網の照明が、一斉に暗くなった。
停電ではない。第五迷宮の炉熱低下により、十基へ送る動力が安全値を下回ったのだ。医療区画と浄水設備だけは点灯し、生活区画は非常灯へ切り替わる。
鉄平が炉を調べると、ゴーレム改装と素材再生で熱を使いすぎていた。燃料不足を補うため迷宮設備へ仕事を集めた結果である。
世界の声は、ポイントを使った《恒久光源》を勧めた。必要値は現在の共同口座で払える。しかし維持条件も故障時の挙動も表示されない。
湊は交換を保留した。
まず消費を測る。医療、浄水、冷却、通信、調理、生活照明。奈々と鉄平が回路を分け、一時間ごとの使用量を記録する。
食堂では食事時間を日没前へずらし、夜間照明を減らした。子ども区画と階段には、転倒防止の灯りを残す。
暗くする場所を、立場の弱い人へ押しつけない。利用者と一緒に必要な明るさを確かめる。
二時間後、炉熱の低下が止まった。
照明は元に戻さなかった。使わずに済んだ回路を、そのまま非常時の余力として残すことにした。
照明を落とした区画では、避難者が持ち込んだ小型ライトを勝手に使い始めた。乾電池の残量は個人持ちで把握されていない。冬一は没収せず、非常時に共有できる本数だけ登録してもらう。使う自由は残しながら、停電時に誰が灯りを持っているか分かる表を作った。個人の備えを最初から共同物資として数えないことも確認した。
食堂の窓口には翌日の点灯予定を貼り、急な変更は白い無線で知らせる。知らないまま暗くなる不安を減らした。
六割の灯りで暮らす工夫も、皆の仕事になった。
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