二つの避難所
【本文】
世界公開から一週間が過ぎた。
地下の地域隔離網は百四十九人。市民体育館には九十三人。二つの避難所は物流、通信、医療相談で繋がっている。
体育館の天井は仮支柱で保たれ、浄水管と簡易トイレが設置された。重症者は地域網へ、安定した患者は体育館へ戻す流れも始まった。
食料は地域網で二十八日分。体育館は十一日分。共有在庫にしても、道路が戻らなければいずれ尽きる。
入口を閉じるべきだという意見は残っている。外の家族を探したい人もいる。全員が同じ未来を望んではいない。
それでも赤い無線が鳴れば、救助班は出る。戻った人数を冬一が読み上げ、千鶴と拓郎が二つの名簿へ記録する。
その夜、消防署の地図から赤い印が一つ消えた。救助できたからではない。通信が途絶え、状況を確認できなくなったためだった。
安西は印を消さず、灰色に塗り替えた。
分からない人を、いない人として数えないためだ。
湊は灰色の場所へ向かう道を探し始めた。
二つの避難所が守れたからといって、町の外側が安全になったわけではなかった。
二つの避難所の食料日数は、別々に隠さず同じ表へ並べた。片方だけが長く持つよう物資を抱えれば、もう片方から人が流れ、結局どちらも崩れる。千鶴と拓郎は三日ごとに配分を見直す。体育館で新しい搬入先が見つかれば、地域網にも共有する。支援する側とされる側を固定せず、持っている物を往復させる関係を目指した。
体育館側の井戸水が使える可能性も調査し、成功すれば地域網から送る水を医療へ回す計画を立てた。
調査担当と期限も決めた。
(次話へ)




