救助ポイント
【本文】
高齢夫婦の救助後、参加者全員へ大量のポイントが付与された。
『生命救助を確認。危険度補正を加算します』
世界の声は、侵食体が近づくまで救助を遅らせれば、さらに得点が増えたと表示した。
岳は画面を閉じた。
救助を点数にするだけでなく、危険を大きくするほど得をする仕組みだった。
安西は消防記録へ、ポイント表示と時刻を残す。今後、得点目的で救助を遅らせる者が現れる可能性がある。
地域網では、救助ポイントを設備拡張へ使うか議論になった。拒否して消滅させるより、助けた人の寝床や水へ戻すべきだという意見もある。
湊はポイントそのものを汚れた力とは決めつけなかった。使い方と、得るための行動を分ける。
救助を遅らせず得た分だけを共同口座へ入れ、使用記録を公開する。危険度を意図的に上げたと判定されたポイントは受け取らない規則を作った。
最初の使用先は、地上避難所へ送る浄水管と簡易トイレだった。
世界の声が望む競争の報酬を、競争しない場所へ使う。
それが正解かは、まだ誰にも分からなかった。
共同口座には、獲得理由と参加者、危険を意図的に増やしていないという確認欄を設けた。一人が承認して使うことはできない。設備担当、避難者代表、救助担当の三者が署名する。面倒でも、ポイントが増えた瞬間に使い道を決めないためだった。世界の声は即時交換なら割引すると勧めたが、会議が終わるまで表示を閉じた。
浄水管を設置した後も水質を測り、ポイントで作った設備だから安全だとは判断しなかった。
使用後の維持費も共同口座から出すと決めた。
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