地上避難所をつなぐ
【本文】
市民体育館を、地域隔離網の外部避難所として登録する作業が始まった。
迷宮へ融合するのではない。物流、通信、医療相談だけを繋ぎ、地上の運営権は体育館職員と避難者代表が持つ。
冬一は白い定時無線を一日四回設定した。食料、水、患者、建物、周辺モンスターの五項目を同じ順番で報告する。
第九迷宮の物流路は一日に運べる重量が限られる。体育館側からも空箱、廃棄物、診療記録を戻し、一方通行にしない。
奈々は崩落した観客席を閉鎖し、使用区画を半分へ縮めた。狭くなるが、見回る範囲を減らし、余震時の避難距離を短くできる。
拓郎が避難者代表の一人になった。地域網へ疑いを持った人間だからこそ、物資が不公平に減っていないか確認する役を引き受ける。
湊は賛成した。信じる人だけで監査すれば、見落としが生まれる。
最初の定時連絡で、体育館から「水不足、患者一名悪化なし、南側に影獣二体」と届いた。
地下へ入れない百人近い避難者が、地域網の外にある数字ではなく、同じ通信表の中へ加わった。
体育館側にも物資担当、医療担当、夜間担当を一人ずつ置いた。一人が全ての鍵を持てば、眠った時に配給も連絡も止まる。鍵は用途別に分け、引き継ぎ時刻を帳簿へ書く。地域網は支援条件として命令せず、自分たちが失敗した例を共有した。拓郎たちは必要な部分だけ採用し、体育館の人数と建物に合わせて手順を変えた。
物流路が止まった場合の徒歩経路も地図へ残し、地下設備だけへ依存しない支援線を準備した。
体育館側も毎朝、徒歩経路の障害物と影獣の数を確認して定時連絡へ加えた。
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