入口を閉じろ
【本文】
地域網へ戻ると、食堂で話し合いが始まっていた。
避難者が百四十九人となり、収容上限まで残り一人。外から救助要請は続いている。入口を閉じるべきだという意見が出た。
「今いる子どもや患者を危険にしてまで、まだ増やすのか」
声を上げた男性は、食料庫から缶詰を持ち出した父親だった。自分だけを守りたいのではない。娘が再び空腹になることを恐れている。
反対側から、外に家族がいる避難者が怒る。入口を閉じれば、助けを待つ家族はどうなるのか。
湊は所有者の命令で話を終わらせなかった。現在の水、食料、空気、病床、燃料を全員へ示す。
千鶴は、受け入れ一人ごとに何日減るかを説明する。奈々は地上避難所を支援すれば、全員を地下へ入れなくても救えると話した。
入口を常時開放する案も、完全閉鎖する案も採らない。重症者、乳幼児、単独で生存できない人を優先し、その他は地上避難所へ物資と設備を送る。
男性は賛成しなかった。それでも、自分の不安が数字と対策へ置き換えられたことで、怒鳴るのを止めた。
対立は消えず、運用規則として残された。
会議中、外で救助を待つ人の声が無線から流れた。議論を急がせる圧力になる。それでも千鶴は、結論を怒鳴り声で決めさせなかった。重症者優先の基準、地上支援へ回す物資、上限を越えた場合の換気増設を紙へ分ける。今すぐ実行する項目と、確認後に決める項目を分けたことで、入口を閉めるか開けるかだけの争いから少し離れられた。
反対意見を言った人の名前は議事録へ残さず、内容だけを記した。後から配給で不利にされる不安を作らない。
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