三つの寝台
【本文】
瓦礫の下から救出された三人のうち、一人は胸部を圧迫され、呼吸が弱かった。もう一人は脚を骨折し、最後の一人は頭部に傷があるが意識はある。
空き寝台は三つ。だが体育館には、天井崩落とは別に発熱した高齢者や妊婦もいた。
小春は誰を地域網へ運ぶか、一人では決めなかった。体育館の医師と看護師、安西、本人や家族へ状態を説明する。
胸部負傷者と、設備がなければ処置できない頭部負傷者を第七迷宮へ移す。骨折者は体育館に残り、固定と鎮痛を行う。三つ目の寝台は空けたままにした。
「余っているなら母を入れてくれ」
発熱した高齢者の家族が訴える。
小春は拒絶せず、体育館側でできる検査と治療を説明した。状態が変われば三つ目を使う。今は緊急搬送に備える。
空き寝台は、誰にも使わない場所ではない。次に悪化する一人のための設備だった。
湊は地域網へ二名の受け入れを連絡する。人数は百四十九人相当となる。
残る避難者へは、水、非常食、毛布、簡易照明を物流路から送った。
三人だけ連れ帰って終わるのではなく、残った人が今夜を越せる条件を体育館へ置いていった。
骨折者には、地下へ行けない理由だけでなく体育館で受けられる処置を伝えた。固定具、鎮痛薬、二時間ごとの循環確認。家族が介助できることも由香が無線で教える。選ばれなかった人へ説明がなければ、残された場所は待つだけの場所になる。小春は次の診察時刻を三人分すべて書き、誰が見ても分かる位置へ貼った。
三つ目の寝台には酸素、点滴台、毛布だけを置き、誰の名も書かなかった。空きではなく緊急用だと分かる札を付ける。
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