力を分ける
【本文】
黒い球体から細い光が伸び、モモを空中へ吊り上げた。
桃色の体から金色が吸い出されていく。モモは声も出せず、みるみる小さくなった。
湊は白線を越えて走った。
重殻が進路を塞ぐ。鉄棒を振っても殻には傷一つつかない。岳が体当たりしても、岩壁のような脚は動かなかった。
「湊、分けろ!」
誰へ、何を、どれだけ渡すのか。
《分配》へ意識を集中すると、四人の間に細い道が見えた。筋力だけではない。岳の固定する感覚、小春の見抜く目、朔の反響を捉える耳。それぞれの力を一か所へ集められる。
湊は同意を求めた。三人が迷わず頷く。
小春の観測が湊の視界へ重なり、重殻の首元に薄い赤線が見えた。朔の探査が殻の内部を響かせ、空洞の位置を伝える。岳の力を両腕へ受け、湊は鉄棒を赤線へ突き込んだ。
殻が割れた。
だが二体目が岳を弾き飛ばす。壁へ打ちつけられた岳から力の流れが途切れ、湊の両腕が急に重くなった。
小春は岳へ駆け寄らず、黒い球体を指した。
「モモが先。あの子が消えたら、岳の傷も治せない!」
朔が消火器を球体へ投げる。湊は残った力をすべて朔へ分けた。朔がバールを振り抜き、宙の消火器を打つ。
小春は倒れた岳の呼吸を確かめながら、残った一本の発炎筒を重殻の目へ投げつけた。赤い炎に怯んだ巨体が向きを変え、ほんの数秒だけ球体までの線が開く。
銀色の容器が球体へ激突し、表面に亀裂が走った。
モモが床へ落ちる。湊は小さくなった体を受け止めた。
『みんな、いたい』
モモの淡い光が空洞を満たし、四人の傷を同時に包んだ。
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