魔弾
——ザンッ!——ドゴッ!——ザシュッ!
「メイ、マイ。包囲してくる大群の対処法、その実践訓練……ねっ!」
炎焔を振るい、襲い来る第五世代を次から次へとなぎ倒していく寧々。
「そんなの、眼の前のヤツをぶっ叩きゃ良いんで……しょ!」
剛斧・禍断を豪快に振り回すマイ。
「……それじゃ駄目よメイ」
それとは対象的に、冷静に、そして確実に斬刃・黄泉斬で切り裂くメイ。
「良い?まずは囲まれても良いように固まって。そうして仲間に背中を任せる……のっ!」
——ザンッ!
「OKOK~♪そんだけ分かれば、もうだいじょ・う・ぶっ!」
——バゴッ!
「……ぜんぜん大丈夫くない」
——ジャッ!
「ほらマイ、1人で突出しない!落ち着いて、向かってくる敵だけを……斬る!」
次々と襲いかかる黒い第五世代。だが、この3人の前ではまるで相手にならなかった。
「あぁ~もう面倒。一気に決めちゃおうよ~」
「マイ、今は辛抱よ。総力戦ではパワー配分が大切なの。チカラを温存しつつ、各個撃破が鉄則よ」
「はぁ~い……っと!」
——ドゴッ!
一体ずつ、だが確実に数を減らしていく第五世代。
このまま行けば押し切れる——そう確信した次の瞬間だった。
——ガンッ!
「ぐっ!」
戦場に響く鈍い銃声と、透流太の苦痛の叫び声。
そして、寧々の目に飛び込んで来たのは、肩に銃弾を受け流血する透流太。
「……透流太!!血が……スグに私が……」
傷を負った透流太を見て、一気に冷静さを失う寧々。
だが、メイだけは透流太が倒れていない事に気付いていた。
「寧々、駄目!今ここから動いたら駄目!透流太を良く見て!」
慌てふためく寧々を見て、メイが叱咤する。
そして冷静に透流太に視線を移す寧々。そこには、横目でコチラを見て、笑顔を浮かべる透流太の姿があった。
「……ごめんなさい。私、私……いえ、眼の前の敵に集中しましょう!」
透流太の顔を見て冷静さを取り戻す寧々。
◇
肩に傷を負った透流太の眼前にはグノーシス。
互いに睨み合い、静寂だけが流れる。
沈黙を破ったのはグノーシスだった。
「クェーサー」
真っ黒いオーラを纏ったグノーシスが腰を落とし両腕を構える。
その異様な構えを前に、咄嗟に暁螺を八双に構え直す透流太。
透流太の直感が警鐘を鳴らす。
——マズい。
次の瞬間。
グノーシスの両腕が双星を抜いた。
ガララララララララララララッン!
一瞬。
それは豪速の早撃ち。
目にも留まらぬ速さで撃ち出された12発の弾丸。
だが発射された弾丸は透流太に向けられたものではなかった。
ギギギギギギギィィィィィンッ!
弾丸と弾丸が激しくぶつかる。
跳ねた弾丸が、さらに別の弾丸を弾く。
それはまるで光の筋のように、無数の弾丸が透流太の周囲を縦横無尽に跳ね回る。
「なんだ……どうなってんだ!?」
右、左、後ろ。
辺りを見回し、どう対処したら良いのか迷う透流太。
ギィィィィィィィィィ……ッ!
その間にも弾丸は更に速度を増して跳ね回る。
(どうする……この場から離れて……いやっ!)
意を決して透流太が前に出る。
どこから飛んでくるか分からない弾丸に対処するよりも早く、グノーシスを——斬る。
ダンッ!
構えを下段にスイッチし、速度重視の一撃。
「おぉぉぉっ!」
——ザンッ!
透流太の下段からの斬り上げ。
ガッ!
グノーシスがバックステップ、その切っ先がわずかにかする。
後ろに下がりながら再度ホルスターに双星を収めた、次の瞬間。
ガララララララララララララッン!
着地と同時に12発の速射。
先ほどの射撃とは違い、放たれた弾丸は透流太を捉えていた。
「ちぃ!洸杜、回避を!」
眼前に迫る弾丸を一発、二発と弾き返す。
だが、その内の一発だけは弾道が違っていた。
——シュンッ!
透流太を通り越す一発の弾丸。
そして、その弾丸が飛び去った瞬間。
ギィィィィィィィンッ!
それまで縦横無尽に跳ね回っていた弾丸が物凄い速度で一斉に透流太へと放たれる。
それは摩擦と跳ね返りにより速度を増し、熱を帯びて赤熱する。
透流太の死角からの12発の弾丸。
それでも視線はグノーシスを捉えて離さない。
絶体絶命。
——その時。
ジャッ!
里の出口から一つの影が飛び出す。
そして十二発の赤熱弾が透流太へ襲い掛かった、その時。
ガガガガガガガガガガガガッン!
「あだだだだだだだだだだだっ!」
龍夫だ。
「ちょっちょっちょっ!いきなり何するんですか!痛いじゃないですか!」
予想外の乱入に、一瞬だけ硬直するグノーシス。
その一瞬のスキを見逃さない透流太。
重心を落とし、暁螺を真横に、霞の構えを取る。
「太陽光一刀流……奥義・日輪!」
——ザンッ!
光波を纏った暁螺が円を描く。
一閃。
グノーシスの右腕が宙を舞った。
ブシュッ!
鮮血が弾け飛び、辺りを赤く染める。
「……グアァッ!」
グノーシスの絶叫が漏れ出る。
「まだ……」
透流太が追い打ちを仕掛けるべく、グノーシスに追撃を繰り出そうとした——次の瞬間。
ピピッ、ピピッ……ピィーーー……ドガァァァァンッ!
突如、黒い第五世代の一体が自爆した。
そしてタイマー音を響かせ、グノーシスの前に立ち並ぶ漆黒の軍団。
「自爆だと!?」
一瞬怯む透流太。だが瞬時の判断を下す。
「だったら、爆発する前に……太陽光一刀流……奥義・紅炎!」
暁螺を肩越しに構え、横なぎの一閃。
ズドドドドッ!
その一撃で漆黒の波が跳ね上がる。
◇
ドガァァァァンッ!
「コイツら、急に!寧々、もうチカラをセーブなんてしてらんないよ!」
「みたいね、全開で行くわよ!」
「……私も、全開放」
「人機融合、双斧・禍断/忌断!」
マイの剛斧が二つに分かれ、光の鎖でつながれる。
「いっくぞーーーっ!ひっさつーーー、双斧・トルネード・バースト・フォース!」
光の鎖で繋がれた二本の斧を高速回転させながら突進していくマイ。
「……人機融合、白刃・不視蝶」
——ギンッ!
メイが黄泉斬をその場に突き立てると、その先端に青と赤の二枚の刃が展開する。
「……薔薇姫/茨姫」
次の瞬間、メイを中心に球形の光のドームが形成され、どんどんと広がっていく。
その光のドームに入った第五世代の動きが止まっているかの如く、ゆっくりとなる。
「白銀機構……Q点直下・《シューティング・スター》発動!トランジスタ・ブースト!」
寧々が高速形態へと移行、残像が尾を引き光の筋となる。
「おぉぉぉぉ……ウィドマン・シュッテン・メテオ……ストライク!」
チュドドドドドドドンッ!
メイの薔薇姫/茨姫の効果で動きの遅くなった第五世代は、もはや動かない的となっていた。
◇
右腕を失ったグノーシスが、第五世代の波に消える。
自爆する漆黒の軍団を食い止めるのに追われ、グノーシスが姿を消したことに気付かない透流太。
「ちぃっ、まだ来るか!」
ズドドドドドォンッ!
「透流太、こっちはあらかた片付いた!」
双斧を回転させながら、そのまま敵陣を突っ切ってきたマイが透流太の応援に駆け付ける。
透流太が寧々たちの戦線へ目を向けると、敵の数はすでにまばらだった。
「じゃあコッチも片付け……グノーシス!?あんのヤロー、逃げやがったか!」
*****
戦場には無数の残骸と、残されたグノーシスの右腕。
そしてその手に握られたままの双星ポラリス。
「……その銃、アステルの……」
メイがふと、つぶやいた。
それはかつてミテラケフィから受け継いだ、銀河銃闘術正統継承者――アステル・バイナリアの愛銃だった。
「これは……カグヤに渡しましょう」
寧々がグノーシスの手からポラリスを取ると静かに腰へと収めた。
一時の静寂が戦場を包む。
双星の片割れを残して消えた狂星グノーシス・アグノジア。
運命の螺旋は、いまだ途切れず絡まっていく。
「あぁ~もう、酷いじゃないですか……。わたくしのお肌に傷が……」
「安心して龍夫、ひとっっっつも付いてないわよ」
―to the Next World―




