襲撃
一夜明けた獣人の里は、いまだ祭りの真っ最中。
朝の広場は人もまばらで、屋台もまだ閉まっている。
「昨日は気付かなかったけど、結構広い里なんだな」
透流太が里を見渡すと、家々が整然と立ち並び、畑も丁寧に整備されている。
「ほら、川も流れてるわ。水もすごくキレイに透き通ってるわ」
「ホントだ、魚も泳いで。良いとこだな~」
二人が里の散策をしていると、そこへ長老が通りかかる。
「おぉ、これは使者様。おはようございます、お早いですな」
「おっ、長老、おはようさんです!こんな朝から集まりですか?」
「ほっほっほっ、年寄りは朝が早いもんでしてね。では使者様、なるべく早く皆をまとめるよう務めます」
そう言って長老は、透流太たちに深々とお辞儀をし、会談の席へと向かっていった。
「しっかし、昨日のアレ、美味かったな~。今日もまた食べたいよな~」
「私はあのフワフワした綿のような雲のような。あれが食べてみたいわ~」
——キィィィィィィィ……
「「!?」」
「なっ……敵性反応!」
「まさか……ここが見つかったって言うの!」
すぐさまメイとマイの元へと駆けつける透流太、そして長老の元へと走る寧々。
「「敵襲だ!」」
透流太、メイ、マイはすぐさま戦闘態勢に入り、里の入口へと走る。
寧々は長老へ、住人全員に避難を呼びかけるよう指示。
「長老、まずは全員を集めてスグに集落の奥へ!」
「敵ですと!そんな……まずは皆を集めるのが先決じゃな」
そこへ若い獣人が数名、寧々の元へと名乗り出る。
「ここは俺達の里……使者様たちだけじゃなく、俺達にも戦わせて下さい!」
「……ありがとう、戦いたい気持ちは嬉しいわ。でも、今一番大事なのは皆を守る事よ」
寧々の言葉を受け取った若い獣人たちは、率先して避難を誘導し始める。
「龍夫!龍夫はどこ!」
寧々が叫ぶと、どこからとも無く龍夫が現れる。
「はいはい、ココにおりますよ~。えぇ、ずーっとココに居ましたとも。どうせわたくしの事なんて忘れて、みんなで祭りを楽しんで……」
「龍夫、みんなをお願い!」
そう言って龍夫の手を握りお願いする寧々。
「ウホッ!……うぅ~ん、寧々さん。もしかして私のこと……す、す、す」
「じゃっ、お願いね!」
そう言い残すと、物凄いスピードで去っていく寧々。
「う~ん、いけずぅ~。愛しいけれど、憎いお方♡」
*****
里の外へ飛び出した透流太たちは、その光景に思わず足を止めた。
彼らの眼に飛び込んできたのは黒い第五世代の大群。
漆黒の波が土煙を上げ迫ってくる。
そして、その中心には忘れもしない因縁の男の姿。
「……グノーシス」
両手に携えるは星の名を冠した二丁の銀銃、双星・ポラリスとカノープス。
——ザッザッザッザッ……
漆黒の波が鈍い足音を鳴らし、徐々に里を包囲する。
グノーシスの姿を目にした透流太が強く拳を握る。
駆けつけた寧々もグノーシスの姿を捉える。
唇をきゅっと結び、一歩前へ出る寧々。
「透流太、ヤツの相手は私が……」
一呼吸置いて、透流太は寧々の目を真っ直ぐ見据える。
透流太の落ち着いた声が、その場に張り詰めた緊張の糸を静かに緩める。
「——いや……ヤツはオレが引き受ける。寧々、メイ、マイはあの黒いアンドロイド集団を里に近づけないように……」
3人にそう告げた次の瞬間、透流太のグラフィック・ギドラーが光を放つ。
「洸杜……全開放!」
——ダンッ!
手に持つ暁螺が一瞬で真っ赤な炎に包まれる。
一直線に駆け出した透流太が、グノーシスへと一気に間合いを詰める。
——ガンッ!
グノーシスの銃弾が透流太を迎え撃つ。
銀河銃闘術が本領を発揮する。
銃弾をサイドステップで避ける透流太の頭部目掛けて、グノーシスの放つ上段の足刀が襲い掛かる。
咄嗟に暁螺で受ける透流太。だが、その剣撃を足裏で受け、そのまま上空へと跳躍。
——ガンッ!ガンッ!ガンッ!
そして上空から二発、三発と放たれる銀の弾丸。
「上……!」
一発目、二発目と暁螺で受け、三発目をギリギリで回避。
だが、その回避した先に向けグノーシスが落下からのかかと落とし。
寝転がりながらも暁螺で受ける。
態勢を整える間もなく繰り出させるグノーシスの連続攻撃。
一旦距離を取り、体制を整える透流太。
「ちぃっ……けど、前よりかは戦えてる」
——チャッ。
透流太の構えが変わる。
「どこから飛んでくるか分からない相手には……ってサニーさんも言ってたな」
暁螺を立て、右肩に寄せた構えを取る。
八双。
それは透流太にとって攻勢へ移る合図。
その構えを見たグノーシスの腰が静かに沈んだ。
「……」
グノーシスは無言で双星を構える。
右手は大きく前に突き出し、左手は上段。
まるで槍を大きく上段で構えたような姿勢を取り、腰を大きく落とす。
グノーシスが初めて銀河銃闘術の構えを取る。
「……マゼラン」
——ダッ!
低い態勢のまま飛び出したグノーシス。
グッと構える透流太。
次の瞬間——グノーシスの姿が視界から消える。
「なっ!目で追え……ない」
透流太の背筋にゾワっとした感触が走る。
——ガンッ!
どこから撃たれたのかも分からない銃撃。だが洸杜が反応していた。
無意識に上体を反らす透流太。そして目の前を下から上へと通過していく弾丸。
その一瞬がスローモーションのように過ぎる。
一発目は当てるための射撃ではない。
本当の狙いは視線を奪うため。
透流太の視線は完全に目の前の弾丸を追っていた。
そして意識が削がれたその瞬間。
——ガンッ!
透流太の背後から弾丸が放たれる。
だが、それも洸杜が反応し、咄嗟に暁螺を背中に回し、弾丸を弾く。
「ちぃっ!」
その暁螺に向かってグノーシスの蹴足が刺さる。
暁螺を弾かれ大きく態勢を崩し、無防備になる透流太。
その一瞬の隙を見逃さないグノーシス。
「……」
——ガンッ!ガンッ!
双星から放たれる二発の弾丸。
暁螺を地面に突き立て、咄嗟に横へ飛ぶ。
だが……。
ギィンッ!
放たれた弾丸同士がぶつかり合う。その反動で弾道が90度曲がる。
洸杜の補正で弾丸は見えている。
身体は、まだ空中。
——避けられない。
ズバッ!
その弾丸が透流太の肩をかすめる。
「ぐっ!このままじゃ……ジリ貧か」
肩に血がにじむ透流太。だが深手ではない。
にらみ合う両者。
どちらが先に仕掛けるか様子を伺う。
一瞬の沈黙——。
その時、グノーシスが不可解な行動をとる。
なぜか双星をホルスターに収め、視線もどこを見ているのか測れない。
「なんだ……!?」
そのグノーシスの不気味な動きを目にし、構える手にチカラが入る。
「……主よ」
小さく何かをつぶやくグノーシス。
——次の瞬間。
それは明らかだった。
何かが変わった。
いや、まるで別物と言って良いほどの変化を見せるグノーシス。
纏ったオーラがどす黒を増して行く。
「クェーサー」
突如、変貌を遂げるグノーシス。
戦いの螺旋は激しく渦巻いていく。
「うぅ~ん、外の様子も気になるし~。ちょっと見てきましょうかね~」
―to the Next World―




