信念
ザザザザザザァァァァァンーーーー!
突如、湖から姿を表した超大型の変異龍。
その近くには、さきほど龍を撃破したばかりのメイの姿。
「……ダメ、チカラがもう……透流太」
白銀機構の反動が現れ、メイの小さな身体は湖へと落下していく。
「メイ!!」
——ズダンッ!
咄嗟に飛び出した透流太が空中でメイをキャッチし救い出した。
「良かった……透流太はそのままメイを見てて!コイツは私が……相手をする!」
そのまま対岸へと飛び移った透流太。だが変異龍はそれを見逃さない。
ガァァァァァァッーーーー!
透流太に向かって突進していく変異龍。
「オマエの相手は私だ!」
寧々の瞳に炎が宿る。
それは決意の証であり、寧々の信念そのものを象徴していた。
「……白銀機構……解放……」
ダンッ!
——次の瞬間、寧々が走りだす。いや、それは走ると言うには余りにも速すぎた。
(……ぐっ、制御が……視界が……ボヤける)
それは音速の疾走。助走を必要としないゼロ距離からの超加速。
(……ダメだ、このままでは……脳が焼き切れる……心臓が保たない)
急激な加速に脳であるプラグコアの演算処理が追いつかず、同時に心臓であるプラズマエンジンが悲鳴を上げる。
オーバーヒート寸前、もうダメかと思われたその時。
透流太から貰った指輪がまばゆい光を放つ。
(……指輪が!?いや、これは……演算負荷が下がってる!?)
寧々の視界が、徐々に視界がクリアになって行く。
更に……胸のペンダントも蒼白く輝き出す。それはデステ兄さんから送られたペンダントだった。
(……プラズマエンジンが安定して……そう言う事だったのね、デステ兄さん)
プラズマエンジンの駆動効率が最適化される。回転数が見る見る安定していく。
「これは……いえ、これなら行ける!」
陸に上がった変異龍が、メイを抱えた透流太に襲いかかる。
「くそ!こうなったら、やってやんぜ!」
メイを抱えたまま剣を構える透流太。だが、透流太の視界に高速で接近する寧々の姿が写る。
(寧々……それなら……)
——ズダンッ!!
寧々の姿を見た透流太は、その場で地面を蹴り、そして高く、真っすぐ飛び上がる。
それを見た変異龍は透流太を追って真上に首を伸ばす。
(透流太が作ったチャンス!逃すか!)
剣を真横に構えた寧々が更に加速。
「トランジスタ・ブースト起動!」
ダダダダダンッ!
多段跳躍で空高く駆け上がる。その姿はまるで蒼い稲妻。
「……ぐぅっ!このまま……振り切る!」
音之羽寧々に搭載された疑似凛冽機構、それは両手足に装着された超絶加速装置。
その名は、白銀機構・Q点直下。
超加速に加え、多段跳躍からの無限加速。
その時、寧々は蒼白いイオンテイルと化す。
「おぉぉぉぉぉ!……ウィドマンシュッテン!メテオォォォ……ストライク!!」
蒼炎を纏った炎焔が蒼白い尾を引き、彗星となり夜空を焦がす。
寧々が描く光の筋が龍に重なった次の瞬間。
——キンィィィィィッ!
ズッ……ズズズズズズッ……
ダダァァァァァァンッ!
一撃。
龍の胴体を真っ二つに両断する。
炎焔の軌跡が蒼白い残光となり、夜空に残像を残す。
そして、あれほど巨大だった龍は、なす術もなくその場に崩れ落ちる。
空高く飛び上がり、月に照らし出された寧々の姿はまるで、尾を引きながら宙を泳ぐ闘魚のよう。
その美しさに見入ってしまい、声も出ない透流太。
*****
——長い夜が明ける。
回復のために休んでいたメイとマイはすっかり元気を取り戻していた。
そして透流太のテントの中からは明るい声が響いてくる。
「はいはい、次は何が良いかな~♪」
「え~っとね、マイはチョコ!」
「……メイもチョコ」
「コラッ!朝食前からそんな、しかも回復したてでダメでしょ!それと透流太も!あ・ま・や・か・し・す・ぎ!」
そう言って透流太のこめかみをグリグリする寧々。
「あででででっ!わかった、わかったから。悪かったよ~」
「まったくもう、二人も……メッ!」
トトンッ!!
そう言って双子の頭に手刀を入れる。
「あいてっ!……は~い、ごめんなさ~い」
「……あうっ!寧々、ごめんなさい」
だが、元気を取り戻した二人を見てほっとする寧々だった。
*****
「さぁ、そろそろ行きましょう。まだ先は長いわよ」
そんな寧々の顔をチラチラと見る透流太。昨夜の寧々の姿が目に焼き付いて忘れられないのだろう。
「……な、なによ、さっきからジロジロ見て」
「あっ、いや、何でもない。さっ、出発しよう。出発、出発!」
「しゅっぱ~つ!」
「……しんこう」
一行はまた歩き出す。
目的地はまだまだ先だ。
だけど皆の足取りはとても軽かった。
―to the Next World―




