解放
「んじゃあ一丁……行きますかぁ~!」
——ドンッ!
透流太が地面を蹴り、空高く飛び上がる。
「水の上じゃ攻撃しづらいわね~。ちょっと透流太、引きずり出してよ」
「あい……よっと!」
ズガンッ!
透流太が腹の柄で龍の頭を真横から思いっ切り叩きつける。
ギャァァァァァッ!!!
透流太の渾身の一撃に、たまらず陸に向かって行く龍。
「フッフッフッ、来たわね~。そんじゃあ一発……喰らいなさい!」
ズドンッ!
今度はマイの渾身の一撃が決まる。
ギシャァァァァァッ!!
マイの攻撃を受け、雄叫びを上げる龍。
「ちょっと、ちょっと。変異龍ってこんなもの?ぜんぜん余裕じゃないの……よっ!」
ズドンッ!
マイの追撃が龍に入る。
「たしかに、見かけの割には大したことねーな。コイツ、見掛け倒しかぁ?」
次々と繰り出される透流太とマイの波状攻撃に、成すすべのない様子の変異龍。
——だが、次の瞬間。
ザバァァン、ザバァァン、ザバァァン……
「んな!?龍が3匹……4匹、いや、もっとか!?」
「げぇ、ちょっと龍が増えたわよ透流太。どーすんのよ!?」
「どうもこうもねーだろ。やるっきゃねーよなぁ!」
湖の増援に気を取られる二人。その隙を見逃すまいとしてか、最初の変異流が二人に襲いかかる。
——ブゥゥゥンッ!
ドガァッ!!
「ガハッ!」
「グェ!」
視界の外からの尻尾の一撃をモロに受けてしまう二人。
「マイ!……くっそ、こんのヤロー!」
吹っ飛ばされるマイを咄嗟に受け止め、そのまま弧を描きながら龍に駆け寄る透流太。
「マイ、行けるか!」
「当然!!……やられた分は、やり返す!」
龍から一定の距離を取った二人は、まずは陸に上がった龍に狙いを定める。
「どうする、同時に行くか!?」
「……パンからもらったアレを試すわ。決まればあの程度、一発よ」
「ぶっつけでか!?……いや、逆に考えたら、良い練習台ってか」
そう言ってマイは斧を大きく背に構え、極端な前傾姿勢を取る。
その姿はまるで、獲物を狙う獰猛な肉食獣そのものであった。
——ズダンッ!
地面を蹴ったマイの身体が弾丸のように飛び出した。
ブーツに装着された推進装置から真っ赤な炎を吹き出しながら、一直線に突進していくマイ。
ゴォォォォォォーーーッ!!!
「粉砕!爆砕!メガトン級!……いっくぞーーーっ、最大火力っ!……爆ぜろ爆雷!ギガ・ライトニングッ!」
斧の先端に装着された推進装置から真っ赤な炎が噴き出す。
推進力に遠心力が重なり、破壊力を増幅させながら、真っ赤な炎に焼かれた爆斧が振り下ろされる。
——そして次の瞬間。
ズドォォォォォォォンッ!
一撃粉砕。
まるで落雷の如き一撃が龍を両断、そのまま地面に突き刺さる。
これが久遠マイに与えられた疑似凛冽機構の能力。
その名も、白銀機構・爆斧である。
「成敗!!」
「よっしゃ!まずは一匹!残るは……4匹か」
「まだまだ行ける……って言いたいけど、ごめん透流太。チカラがもう……」
白銀機構を初めて使った反動からか、マイの小さな体はたったの一発で限界を迎えてしまう。
「大丈夫……と言いたいトコだけど。ちと厳しいか」
こちらの都合など龍には関係ないと言わんばかりに、4匹の龍は同時に襲い掛かってくる。
「こうなったらマイを抱えて……」
透流太が撤退を視野に入れた、次の瞬間。
「——待たせたっ!」
ザンッ!
「……させない」
シュンッ!
透流太のピンチに寧々とメイが助けに入る。
「大丈夫……じゃないみたいね。とりあえずマイを安全な所に。メイ、行けるわね?」
「……ん、大丈夫」
「寧々!メイ!助かったぜ~。とりあえず時間を稼いでくれ」
「あら、時間稼ぎ?もうアナタの出番は回って来ないかもしれないわよ♪」
「……透流太、マイをお願い……」
そう言って寧々とメイが前に出る。
剣を片手にスッと立つその姿は、月明かりに照らされ、見るものを魅了する。
そして、寧々が手に持つ炎焔の刀身に蒼い炎の文様が刻まれる。
その瞬間、音之羽寧々(おとのはねね)がソニック・ウィングの顔になる。
「先世視始動。身還発動。炎心発動準備開始。」
「篝火始動、プラグコア着火。プラズマエンジン出力500%、陽炎化現象発現」
——ダダンッ!
2段跳躍からの不可視の剣技。蒼い陽炎が放つ必殺の一撃。
——「ヒバナ!」
ザンッ!
グギャァァァァァーーッ
その一撃は龍の片目を深く斬り付ける。
「くっ!浅いか!」
「……それなら」
それは誰も気が付かなかった。
メイの姿が一瞬の内にその場から消える。
姿だけではない、初めからそこに居なかったかの如く、気配そのものが消えていた。
——スンッ……
次の瞬間、龍の首の真後ろ。
メイが姿を現したかと思われた瞬間。龍の首元に、淡く、蒼白く光る大鎌が振り下ろされる。
「……そこ」
蒼白い閃光が弧を描き、音も無く闇夜を切り裂く。
ザンッ!
ズズズズズズーーーン
メイの放つ一刀のもと、龍の首を斬り落とした。
「よっしゃ、これで残り3匹。一気に決めちまうか!」
そう言った次の瞬間、透流太が持つ暁螺の刀身に、真っ赤な炎が宿って行く。
「いっくぜー!サニー直伝!太陽光一刀流……奥義、黒点!!!」
ズドドドドドドーーーンッ
透流太の暁螺から放たれた黒い光が一直線に龍を貫く。
ギャァァァァァッーー!
その光線が二匹の龍を同時に貫いく。
「なっ!その技!?透流太、アナタいつの間に!?」
それはインサニティ・サニー直伝の剣技であった。
——数か月前。
*****
「おい、透流太。これからの戦いは俺たちガントフォースの戦いだ。つまりオマエは無理に付き合う事はねーんだ……けどよ。どうだ、一緒に戦ってはくれねーか?オマエの洸杜は大きな助けになる」
「えっ、何言ってんすか。オレだってもう仲間でしょ?それにミテラにも頼まれてるし、未視だって……それに寧々も。……このままサヨナラは連れないじゃないですか」
「よしよし、良くぞ言ってくれた♪……そこでだ!オマエ、剣術の心得はねーんだって?寧々が言ってたぞ」
「えっ、あぁ、剣なんてニューモートを出たときに産まれて初めて触ったから……」
「そうか、そうか。んなら、ちょっと付き合え!な~に、悪いようにはしね~からよ♪」
*****
「……って訳でよ。サニーからの鬼の特訓を受けてたんだよな」
「アナタ、そんなこと一言も……。いえ、どうせ驚かせたかったんでしょ?」
「まぁ、そんあトコだ。……おっと、まだ一匹残ってんだ、油断すんのはまだ早いぜ」
そんな二人の会話を他所に、メイが既に標的を捉えていた。
「……認識阻害……縮地」
——スウ……
再びメイの姿が消える。
それはメイに与えられた疑似凛冽機構、認識阻害、アンチグラビティ、フロート機能を併せ持った能力。
白銀機構・舞踏霞蝶であった。
スン、スン、スン……
音も無く高速で忍び寄る不可視の舞踏。
水の上に波紋だけを残し、静かに、そして確実に龍の首を狩る。
「……夜蝶」
ザンッ!
次の瞬間、音も無く龍の首が斬り落とされる。
ドボォォォォン!
雄たけびを上げる間もなく水面へと落ちる龍の首。
それはまるで、ひらひらと舞う蝶のように、ふわりと水面の上に浮かぶメイ。
「……終わったわよ」
「えっ!?ちょっとメイちゃん、いつの間に」
透流太が喜ぶのも束の間。急に水面が大きく盛り上がっていく。
「メイ、下がって!何か来る!」
——ザザザザァァァァァーーーーン
それは今までの龍とは比較にならないほどの巨体の龍。
ヌメっとした体表は先ほどの龍たちと同じだが、明らかに異質な雰囲気を醸し出している。
戦いは次のステージへと突入する。
―to the Next World―




