疾走
「……な~んか見えてきたけど……アレって何かの残骸?」
最初に気づいたのは双子の妹、マイでした。
「ん~?なんだアレ?山…にしては変な形だな」
透流太が額に手を当て確認する。
そして、皆の目にもハッキリと見えてきたそれは旧時代の名残。
元は人の営みがあったであろうそれは、今は崩れ、朽ち果て、原型を留めていない。
ただ、長旅の足を休めるには十分過ぎる日陰を提供してくれていたのだった。
「やった、日陰だ!透流太、休も!休も!」
マイが飛び上がって喜び駆けていく。
「あっ!チョット待って!まだ安全確認が……」
注意する寧々の静止も聞かず飛び出すマイ。
「……透流太、一緒に行く……」
メイが透流太の手をぎゅっと引っ張っる。
「よし!じゃあ、オレ達が一番乗りだ!」
透流太はマイをひょいと肩車し、そのまま走り出す。
「……それなら……私が一番乗りだ!」
——ドンッ!
もはや諦めたのか、寧々が本気で駆けだした。
4人が一斉に影に飛び込み、そのままへたり込む。
「はぁ~、疲れた~。透流太~、お菓子たべた~い♪」
「……私はジュース飲みたい……」
しばしの休憩を取る一行。
ここまでの道のりは、透流太や寧々の足ならば、そこまで苦ではかもしれないが、双子の小さい足には過酷な道のりだった。
「ハイハイ、マイちゃんにメイちゃん。お菓子にジュースっと……」
透流太がゴソゴソとリュックを漁り、二人にお菓子とジュースを手渡す。
「ホイ、寧々にはコッチかな。キンキンに冷えてて染みるぞ~♪」
寧々にもサッと冷えた飲み物を差し出す透流太。
「あ…あぁ、有難う透流太……」
寧々が飲み物を受け取る様子を、メイとマイがジーッと見つめる。
「どーしたの寧々。顔が赤いけど、暑さにやられたの?」
「……寧々、お菓子あげる……」
「だ、だ、大丈夫!私は元気だから!」
「ホラホラ、あんまり無理すんなって。寧々だって女の子なんだからさ」
透流太の何気ない一言に、寧々はさらに顔を赤らめてそっぽを向く。
「しっかし、獣人の目撃情報があった地点って、まだ先なのかな~」
地図を開き目的地を確認するが、まだ三分の二と言った所。
「そうだな。まだ2、3日はかかる距離だろう。
この先、こうやってゆっくり休める場所が有るとは限らない。
今日はここで野営をするとしようか」
寧々の提案にメイとマイは飛び上がって喜び、手分けして野営に準備に取り掛かる。
透流太がテントを張り、メイとマイが火の準備。
そして寧々が料理の準備をテキパキと行っていく。
「寧々も料理が上手になったよな~。初めて出会った頃なんてさ……」
透流太が出会った頃の事をメイとマイに話し出すと。
「もうっ!あの頃は中隊長で、料理なんてしたこと無かったから!」
寧々が恥ずかしそうに言葉を遮る。
「でも…未視のお陰で、こうして皆に出せるくらいには上達できたな」
「そ~だな~。未視も、皆んなも、元気にしてるかな~。
写世を出て、もう3か月か~」
夕食の香りが辺りに立ち込める頃には、すっかり日は落ちていた。
昼間の荒野は強い日差しにさらされ、気温は高い。
だが夜の荒野はその真逆で、気温は一気に低くなる。
「さぁ、明日のためにそろそろ休むとしよう」
寧々が就寝を促すと。
「……わたし、透流太と一緒に寝る……」
「あっ、じゃあアタシも~♪」
その光景にクスッと笑いながら寧々が答える。
「ハイハイ。じゃ透流太、あとヨロシクね」
「……。まっ、いっか。寝よ寝よ」
荒野の夜は静かに更けていく。
——どんな時でも、どんな場所でも、朝日は同じ時間に地平線から登ってくる。
「ふぁ~、よく寝た」
「…まだ寝たい…」
「アタシも~」
透流太が起きると、双子はまだねむたい様子で、寝袋に潜ったまま。
「ほ~らっ!いつまでも寝てない!起きて顔を洗って」
そう言って起床を促す寧々。
「よっし、パパっと朝飯を作るから、食べて出発だ」
朝食を済ませた一行は、再び歩き出す。
乾いた風と、まだ登りきってない太陽が皆を出迎える。
「……ねぇ、透流太……」
メイが何かに気付き、透流太の袖を引っ張る。
「ん?なんだ……生き物か?」
視線の先には岩、そしてその岩陰に潜む影。
「んじゃ、アタシが見てくるね~♪」
「あ、ちょっとマイ!まだ危険性が有るかどうか……」
寧々の忠告も聞かずに飛び出したマイ。
だが、次の瞬間——
シャァァァァーー!
「いっったーーーい!チョット、コレなに!?ニョロニョロして……」
——ドサッ!
それは小さな“毒蛇”でした。
そして、噛まれた直後に一瞬で意識を失ってしまうマイ。
「!?」
「マイちゃん!!」
「まずいぞ、毒蛇だ!しかもコイツは……」
取り乱す寧々を見て、普通じゃない事を感じ取った透流太。
「血清は!ギドラーで毒の種類を……」
だが無常にも、この毒蛇の毒は想定外のものであった。
一行の所持するクスリの類ではどうすることも出来なかった。
——だが、寧々がある事を思い出す。
「……そうだ…透流太、地図を出してもらえるか」
そう言うと透流太のグラフィックギドラーが地図を展開。
「——ココだ!透流太、ココに陰の…ガントフォースの開拓地がある!そこに行けばなんとかなる。……だが、この地点からは徒歩で3日はかかる距離だ……」
言うが早いか、透流太はマイを抱き上げこう告げる。
「メイちゃんはオレの背中に掴まって。そして寧々は全力で先導してくれ!」
「洸杜、頼むぞ。……全速力で向かう!」
——一行が向かうのは“かの地”と呼ばれる陰の開拓地。
全力で駆ける寧々と、それを追従する透流太。
「……透流太、マイを助けて……」
「大丈夫、絶対に間に合わせる!」
―to the Next World―
皆さんコンニチワ。
ポーランド埼玉です。
龍夫が襲われたものの正体は毒蛇でした。
まぁ龍夫は龍の特殊個体なので、毒の類は効き目無かったんで、皆にはその説明はしていなかった…ってのがオチでした。
次回は開拓地”かの地”ですが。
実はこの”かの地”、プロット作成中の外伝作品の舞台となっております~。
そちらも投稿した際はよろしくです♪




