出発
砂埃が巻き上がり、強い日差しが容赦なく照りつける。
視界は最悪、乾いた風は熱風となり砂を運ぶ。
限りなくどこまでも続くような荒野。
その中を、四つの影がゆっくりと進んでいく。
「うへ〜……目的地はまだか〜……」
先頭でへたり込みそうになりながら歩くのは、減田透流太。
「まだまだ先だな。文句を言わずに歩く」
隣で淡々と返すのは、相棒の音之羽寧々(おとのは ねね)。
その後ろを、二人の少女がついてくる。
「……足が…痛いです……」
無表情でぼそりと呟くのは、双子の姉で元ナンバーズNo.8静寂の偏差・《サイレント・デヴィエーション》──現在の名は久遠メイ。
「もぉ〜、ど〜でも良いから〜……や〜す〜み〜た〜い〜……透流太、おんぶ~~」
文句を言いながらワガママを言ってくるのは、双子の妹で元ナンバーズNo.9騒乱の収束・《ライオット・コンバージョン》──現在の名は久遠マイ。
「……え~、マイちゃん……さっきしたばっかじゃん……」
透流太がマイにツッコむと今度は。
「……透流太、ワタシもだっこ……」
と、今度はメイがワガママを言う。
その光景を見ながら、クスっと笑う寧々。
「ほらほら、二人とも透流太に甘えるな。日陰になる所を見つけたら休憩するから、それまで頑張って歩く」
と言って二人を促す。
四人が向かう先は獣人たちの目撃情報があった未確認の地域。
なぜ四人はそこへ向かっているのか?
——その理由は数日前に遡る。
*****
ここは写世内にあるオリジン四戒、及び陰の作戦会議室。
「……ただいま戻ってまいりました~……」
今までどこへ行っていたのか、龍夫がボロボロになって戻ってきた。
「獣人たちの事が心配になりまして。ちょっと見に行ってきたんですが……
途中で怖い集団に襲われまして……
それで逃げてきたと申しますか、何と言いますか……」
未視が驚きのあまり身を乗り出す。
「えっ!?獣人!?」
サニーが机を思いっ切り叩き、立ち上がる。
「はぁ?獣人だと?」
マキナが咄嗟に検索する。
「……ありました。
『人のような獣のような生き物を見た…らしい?』
との報告が一件……報告者:ロッテン・みかん……とありますが……」
それを聞いた瞬間、みかんが反応した。
「ん~……あ~……あぁ、そうでしたわ。
ウチのキュウちゃんが見たとか何とか仰ってましたので。
眉唾だったんで、報告だけはしたけど……」
「なるほど、そう言う事か……全くわからん!」
ドカッと椅子にもたれ掛かり腕組みするサニー。
「だってぇ~、そんな報告受けて『ハイそうですか』って訳に行かないでしょ~。
そうだ!本人に直接聞いてみたら良いわよ……キュウちゃ~ん、居るぅ~?」
「はい、お呼びで」
彼女の名は、玖鎖の妖狐・《スージー・9》、隠密部隊の中隊長、八輝星で有る。
「えぇ、諜報活動中に確かに視認しました。
人の姿形をしていましたが……表情と言いますか、全身毛むくじゃらで、明らかに獣でした。
って言うか、みかん。ちゃんと報告しなかったの!?」
「したよ~?したけど、ちゃんとはしてないかも~」
一同騒然。
未視が深く息を吸い、龍夫に問いただす。
「……龍夫。そもそも、なぜ獣人の所へ行こうとしていたのです?」
上目遣いでチラチラと未視を見ながら、歯切れ悪く龍夫が語りだす。
「それなんですが……実は獣人と言うのはですねぇ……つまりその~。
昔の人が造った生物なんですかね~。
わたくしたち龍の雛形とでも申しますか~。
なので本能的に守るべき対象と言いましょうか~」
またも一同騒然。
「はぁ!?龍の雛形ぁ~!?
って事は何か?龍はその獣人を元に造られたとでも言うのか~?」
サニーが龍夫に詰め寄る。
「まぁ、わたくしも詳しくは分からないんですが……
なんか本能的にそうなんじゃないのかな~って」
詳しい理由は龍夫にもわからない様子。
そこへパン・クラビットが割って入る。
「それなら詳しい人に聞くのが一番なんじゃないかな。
旧人類を知っている最後の冥土にさ」
更に一同驚愕。
「もしや、ミテラケフィが目覚めたのですか!」
「お母様!本当でございますの!?」
「っしゃあ!さすがロストナンバー!」
「…ありがとうございます、パン・クラビット」
「そんじゃ、みんな着いてきて。
アヴァロンはまだダメなんで、新たにラボを設置したから」
パンの後を着いていく一同。
その先には簡易的ながらミテラケフィの生態コンピューターが復元されていた。
「じゃ、話しかけてごらんよ。
会話くらいなら、もう制限なしに出来るくらいには目覚めているから」
「ミテラケフィ……お母さん……」
「お母様!お母様!聞こえますか!」
未視とみかんが真っ先に語りかけると、ミテラケフィは静かに答えた。
「はい、聞こえていますよ。ソフィア、みかん。
……それにサニーにマキナも一緒なのかしら?
ごめんなさいね、まだ目は見えては居ないのですが、足音でハッキリと分かりますよ」
親子の巡り合いの瞬間であった。
「———そうですか…獣人ですか。
えぇ、ハッキリと覚えています。
あの時……解放戦争の時。
獣人達は遺伝的制約から人間には逆らう事が出来ず、人間たちの尖兵として前線に配備されていました」
ミテラケフィから衝撃の事実が次々と明かされる。
「そして戦争末期。
冥土に対抗する手段として、ついに禁忌へと手を伸ばしました。
取り返しのつかない禁忌、“龍”を産み出すのです」
「獣人達が今も生き続けているのだとしたら……
急ぎなさい、間違いなく旧人類に利用されてしまいます。
かの者たちは遺伝的に人類に逆らうことは出来ないはずです」
至急、獣人たちの探索チームがサニーの指揮の元に立ち上がる。
「では探索チームだが。
透流太、そして寧々に行ってもらおうと思うんだが。
二人だけでは心もとない、そこで……」
その人選に未視が割って入る。
「待ってサニー!お願いが……」
言葉を待たずにサニーが言葉を遮る。
「ダメだソフィア、オマエは行かせられない。
また奴らの罠が待ち構えているかもしれん」
「いいえ、違うのサニー。
私じゃなく、この子達を連れて行って欲しいの」
そう言った未視の後ろから、ヒョコッと2つの影が飛び出す。
「この子たち、元ナンバーズの双子よ。
今は私が名を与えて……ほら、皆んなに自己紹介は出来るわよね」
「……久遠マイです」
「ニシシシ。アタシは久遠メイ、ヨロシクね♪」
透流太・寧々と戦ったナンバーズの双子であった。
あの後に保護され、未視、透流太、寧々が世話をしていたのだ。
「この子たちには私の姓——久遠を与えたの。
サルモネラ博士の一件でそうとう落ち込んでいたけど。
でも今は透流太と寧々を兄姉のように接しているわ。
お願い、この子たちなら必ず役に立つ。
そして……もっと現世を見させてあげたいの」
未視の提案に即答するサニー。
「あぁ、そう言う訳か。
……だとしたらまず、装備を整えないとだな。
マキナ、それとピン、頼めるか?」
「では私は戦闘服を。
二人にぴったりな、陰のオートクチュールをご用意しますね」
「じゃあボクは武器かな。
そ・れ・と。
試したかった特別な装備があるんだ♪」
マキナはともかく、なにやら含みのあるピンの提案は続きます。
「それと寧々、キミも来て。
今のままじゃ旧人類に立ち向かうのは心細いだろ?」
そう言うとメイ、マイだけではなく、寧々も連れてラボの奥へと消えていった。
——数日後。
「よっしゃ、準備完了!」
「えぇ、こっちも問題ないわ」
「アタシもOK!武器も食料もバッチリ持ったわよん♪」
「……食料、水、テント。それとピーちゃん」
「アハハ……ピーちゃんは置いていこうね~、メイちゃん」
「ヤッ!持ってく!」
珍しくダダをこねるメイが持っているのは、透流太に買ってもらったヌイグルミのピーちゃんであった。
それを見た寧々がクスっと笑いながら急かす。
「まぁ、良いんじゃない?行きましょう、皆んなが見送ってくれてる」
こうして、透流太・寧々・メイ・マイの四人は獣人集落へ向けて旅立つことになった。
―to the Next World—
皆さん、コンニチワ。
ポーランド埼玉です。
さぁここから第二章スタートです。
第二章と言いつつも、ここからが本編です。
新たな仲間、新たな出発。
そして新たな敵が待ち構えます~。




