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ヴァーチャル・オービット

戦場は一時の小康状態。

ネクストの大群は微動だにしない。

ナンバーズ三体も、四戒も、八輝星も、睨み合いを続けている。


その中心で、マキナが未視/ソフィアの回復を終えていた。

「……ミニッツ・リピーター、完了。次の一手……いきます」


マキナの杖が淡い光りを発し、左手に持った分厚い本のページがパラパラとめくれて行く。

「パーペチュアル・カレンダー発動」


昼間の空に夜の帳が落ちる。

マキナ・クラウベルの使うパーペチュアル・カレンダーとは、擬似的に昼夜を逆転させる奥義。

空には太陽と、そして偽りの月が同時に浮かび上がる。

昼と夜が混ざり合った紫の光が、静まり返った戦場を満たしていく。


「……っ、これなら……」

未視の眼に光が宿り、ジョーカーには月洸波が満たされていく。

サニーの両刀、アズマ西サイも太陽光エネルギーで満ちている。


だが、マキナはその場に膝をついた。

「……ここまで、ですね。以後は後方支援に回ります。

みかん、あなたの戦い……私がサポートします」


みかんがニヤリと笑う。

「ふふん。頼りにしておりますわよ、マッキー♪」


マキナはすぐに戦場全体を分析し、最適解を一息で導き出した。


「配置します。

サニーとソフィアは難敵、アスト・レガリアを。

みかんは私のサポートを受けつつ、白銀機構・《プラチナ・コード》を。

ジョーとリリーは……撃槌の弾倉・《リボルバー・カグヤ》を押さえて下さい」


全員が頷く。

次の瞬間、場の温度が一気に上るのが分かった。

戦いの火蓋が開かれる。


*****


——砂煙の向こう、リボルバー・カグヤがゆっくりと撃鉄を起こした。

カチリ。

その乾いた撃鉄音にストライク・ジョーが反応する。

「……カグヤ……今度こそ本当の事を話してもらう!」


最初に動いたのは──ジョーだった。

「カグヤァァァァァ!!」

雷光を纏ったストライク・ジョーが、地面を抉りながらジグザグに駆ける。

その速度はまるで雷そのもの。


ダイヤモンド・リリーが横から飛び込み、輝く残光を引きながら大剣を振るう。

「カグヤ!二対一を卑怯とは言うまい!」


対するカグヤは二丁のリボルバーを交差し、その場で迎え撃つ構えを取る。

「……来るか。ジョー、リリー」


「ジョー、同時に仕掛ける!相手はあの“姉弟子”だ!」

ダイヤモンド・リリーの合図とともにジョーが飛び込み、上段蹴りの態勢に入る。


銀河銃闘術ギャラクシー・ガン・アーツ、それは格闘と銃撃を合わせ、攻め、守り、近接、遠距離、全てのシチュエーションに対応したハイブリッド戦闘術。


——スッ……。

飛び込んで来たジョーに対し、カグヤは冷静で正確な体捌きで簡単にジョーの背後を取る。

「まったく、何度言ったら理解る。……隙だらけだ、このバカ弟弟子おとうとでしが……」


カグヤの身体がフッと消えた次の瞬間、ジョーの足の軸を払う。

ジョーの身体がクルリと反転し、空中に投げ出され——ガンッ!

低い体勢からの足払いに、流れるような銃撃が重なる。


「ジョー!」

リリーが咄嗟にカバーに入ろうと斬りつける。

地面をなぞる剣筋が火花を上げる……しかし。

——スッ……。

「リリーも、脇がガラ空き……修行不足だ、未熟者」

まるで流水のようにスルリとリリーの脇を抜け、そのまま背後を取ったかと思いきや。

そのままリリーの腕を掴むとクルリと一回転、空中に投げ出され——ガンッ!

まるで柔術のような対裁きに銃撃が重なる。


———だが、両者に放たれたその弾丸は足元の地面を撃ち抜いていた。

弾倉を回す音だけが響く。

カララララ……ッ

「勘違いするな、ジョー、リリー。私はサルモネラの犬ではない」


ジョーの目が大きく見開かれる。

「……裏切った……!?カグヤ、どう言う事……?」


カグヤは撃鉄を戻し、クルクルと回転させながら銃をホルスターへと戻す。

「私はアステル・バイナリアの弟子。師匠の仇を取るために今まで機会を伺っていただけだ」

その瞬間、ジョーとリリーの表情が変わった。

「……続きは後だ。 今は眼前の敵に集中しろ」


——その視線の先にあったのは、 白銀機構・《プラチナ・コード》。

そして戦場の中心へ視線が集まる。

ロッテン・みかん vs 白銀機構・《プラチナ・コード》。

次の主戦場が動き出す。


*****


背中の巨大な二基の機動型思念誘導増幅装置:クラスター・ビットが展開。

ロッテン・みかんが腕組みをして迎える。

「……来ましたわね、疑似凛冽機構ぎじりんれつきこう……」


「……クラスター・ビット、射出……」

クラスター・ビットが放たれると、まるで主の命令を待つかの如くピタッと静止。

プラチナ・コードは無言でクラスター・ビットの接続端子に足を乗せる。

ギュオオオオオオオオッ!!

推進炎が噴き出し、宙に舞う。

プラチナ・コードが空へ跳ぶと同時に、白銀の結晶片、自立機動攻撃機体、雀蜂・《キラービー》が高速で周回軌道を描く。


クラスター・ビット。それは疑似凛冽機構を搭載し、プラチナ・コードと接続することでキラービーを自在に操るための、思念増幅装置であると同時に、それ自体が高機動飛行体。


プラチナ・コードは腕組みしたままクラスター・ビットに立ち、上空からみかんを見下ろす。

それを見てみかんが叫ぶ。

「ふんっ!お山の大将気取りかしら。どうしたの、かかってらっしゃいな!」


プラチナ・コードは静かに指を鳴らす。

——パチン!

その瞬間、キラービーが一斉に動き出し、みかんの周囲に白銀の軌跡が走る。

「ッ……!まがい物のくせに……速い!!」


プラチナ・コードは無表情のまま、ただ一言。

「……突撃開始」

キラービーが高速で突っ込み、みかんの肩をかすめていく。

「えぇい、この!すばしっこく……て……ぐへっ!」

キラービーの攻撃によろけるみかん。


「んもう、あっっったま来ましたわ!!」

キラービーの動きに翻弄され、頭に血が上るみかんに向かってマキナが叫ぶ。

「あっ、待て!みかん、早まるな!まずは冷静に、相手の動作シーケンスの解析を…」


———次の瞬間。

広げた魔焦扇を両脇に大きく構え、みかんが叫ぶ。

「フォォォームチェェェーンジ!

凛冽機構、出力1000%!

人機融合、魔焦扇ver.2!!」

魔焦扇が大きく展開し、みかんの全身をまるで蝶のさなぎのように包み込む。


「あぁ、もう出してしまいましたか。あれではエネルギー効率が……」

頭を抱えるマキナを他所よそに、ロッテン・みかんが変身を遂げる。


———さなぎの継ぎ目の隙間から、一際大きな光が溢れ出す。

「んんん……デッビィィィィル!!」

全身を包んでいた魔焦扇がフワッと開き、みかんの新たな姿が露わになる。

背には翼を携え、黒いゴスロリ衣装は、漆黒のビキニアーマーへと変貌。

頭部にはまるでツノのような冠。


———ここに“デビルみかん”が降臨する。


「テレッテ、テレッテー、テッテッテーーー♪」


魔焦ウイングは 空を飛び

魔焦カッターは 鉄を裂く

魔焦キックは 岩砕き

魔焦ビームは 魔焦閃ましょうせん


「あ~くま~のち~から~、み~に~つ~けた~♪

オ~リジン~四戒~、デビルみか~ん、デビルみ~かん~♪」


「魔焦ウイィィィングゥッ!!」

漆黒の翼を駆り、デビルみかんが空を駆ける。


プラチナ・コードのキラービーが突っ込む……が——

「魔焦カッタァァァー!!」

キキキキィィィィィン!!

デビルみかんのベルトから放たれた魔焦カッターが、キラービーを真っ二つに切断。


プラチナ・コードの表情がわずかに曇る。

「……解析不能。形態変化……?」


「おぉっほほほほっ! 今度はわたくしの番ですわよぉ!!」

デビルみかんが高速飛行で一気に間合いを詰める。

「魔焦キィィィィクッ!」

クラスター・ビットの本体目掛け、一直線に急降下キック。


「ぐっ!…キラービー、緊急防御姿勢!守れ!」

それまでの攻勢重視の戦法から一変、防御に集中するプラチナ・コード。

——だが。


「ムダムダムダーーー!その羽虫、すべて叩き落としてやりますわよぉ!!」

みかんが片足を上げると、空中で高速スピンを開始。

「超・魔焦スピンッ!」

ギャギャギャギャーー!

金属がこすれたような金切り音が響き渡る。

そして無数に展開された雀蜂・《キラービー》全機は、その羽音を止め地面に落ちていく。


態勢を立て直す為に距離を取るプラチナ・コード。

———そして次の瞬間。

「…それなら…クラスター・ビット展開。人機融合———モビル・クラスター」

白銀の光が収束し、クラスター・ビットの外装が変形を始める。


ギギギギギィ……ッ!!

装甲が展開し、内部フレームがせり上がる。

ヘッドギアが装着され、白銀の翼が左右に広がる。

足元から拘束アームが伸びクラスター・ビットとプラチナ・コードを接続。

身体が白銀の装甲に包み込まれ、思念リンクの光が全身に走る。

「思念リンク、同期開始。セイフティーロック、解除。パワーゲイン、上昇確認。モビル・クラスター、起動」

白銀機構の真の姿が露わになる。


「メモリコアをオートモードへ移行。

オートエイム、セット。

オートリペア、セット。

オーバーブースト、セット。

フルオートドッジ、セット。

システムオールグリーン。

———モビル・クラスター、起動」


それはまるで“機械マシン詠唱インカンテーション”。

白銀機構の最終形態、クラスター・ビットvre2「モビル・クラスター」が、みかんの前に立ちはだかる。


―to the Next World—

皆さん、コンニチワ。

ポーランド埼玉です。


いやー、長い!(笑)

実際、ep10とep11で終わらせるはずだった、中盤の山場なんですが。

まだ半分過ぎた辺り。


で、今回のテーマは”対比”を現しています。

次回決着&新たな戦場の火ぶたが切られます!

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