ライジング・サン
未視の視界が、ゆっくりと焦点を取り戻す。
焼け焦げた大地の向こうの逆光の中——三つの影が立つ。
土煙が立ち込める中、世界がぼんやりと映し出す。
未視の瞳が潤む。
その涙は、痛みでも恐怖でもない——“帰ってきた”という安堵だった。
「……サニー……みんな……」
影が歩み寄る。
光がその輪郭を照らし、三人の姿が露わになる。
「ハッ、人んちの庭で好き勝手やってくれてるじゃねーか!」
「アタシたちが来たからには、もう好きにはさせませんことよ!」
「……少々、手荒に行きますよ」
一呼吸置き、三人が名乗りを上げる。
「「「我ら、オリジン四戒!現世を統べる黄金機構!!!」」」
黒髪短髪、真っ白な戦闘服。
オリジン四戒のリーダー、インサニティ・サニー。
胸の太陽紋が、怒りで脈打つように赤く染まり、二本のスカーフが熱波で揺らめく。
「……待たせたな、ソフィア」
その声は低く、慈愛に満ちていたが、視線は眼前の敵を捉えて離さない。
長身細身、だがその質量は図りしれない。
オリジン四戒の参謀役、マキナ・クラウベル。
未視の前に膝をつき、凛冽機構が静かに唸る。
「ソフィア、よく耐えましたね。もう安心してください、パワーリザーブを全て回復に回します。」
淡々とした物腰の中にも、仲間を思う優しさが込められているのが伝わる。
だがその指先は、怒りを抑え込むように震えていた。
黒いゴスロリ衣装に身を包んだ三つ編みの少女。
オリジン四戒のトラブルメーカー、ロッテン・みかん。
姉である未視の痛々しい姿を見た瞬間、激しく表情を歪めた。
「……てんめぇぇぇぇ……、よっっくもソフィア姉を……ッ!」
普段は上品な少女が、怒りの感情をむき出しにする。
三人の殺気が重なった瞬間、感情のないはずのネクストの群れが後退し、空気がざわつく。
「フフ……やはり来ましたね、オリジン四戒。
だが私はこの瞬間を!ソフィアを捕らえるこの瞬間を
——千年待ったんだよ!」
そんなサルモネラ博士の挑発にも似た言葉を意に介さない。
そう、この男の怒りは、既に頂点を超えていた。
オリジン四戒のリーダーであり長兄。
インサニティ・サニーの周りの空気が徐々に歪んでいく。
「オイ……サル公。やってくれたなぁ……っ!」
みかんがマキナの袖を引く。
「げっ……サー兄がガチギレしてますわ!マッキー、お願い出来るかしら!」
「了解しました。…ソフィア、しばらく辛抱して下さい。パワーリザーブを防御に回します。……全域防御展開——トゥールビヨン」
透明な球体が3人を包み込む。
それと同時に、サニーの凛冽機構が唸りを上げ、身体が赤熱し始めた。
熱だ。
ただの熱ではない。
175,000TJ級の熱波が、周りの空気を赤く染めていく。
大地が悲鳴を上げる。
「……太陽光二刀流——」
腰から二本の十字剣が抜かれる。
東と西が、太陽のように輝いた。
「——奥義・サン…フレアァァァァ!」
世界が白く染まった。
爆光。 連爆。 連爆。 連爆。
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
辺り一帯が炎の爆風に飲み込まれる。
次の瞬間、視界にあったネクストが消し飛ぶ。
爆炎が一直線に走り、大地に“灼熱の道”が刻まれる。
みかんが叫ぶ。
「アタシだって怒っているん、で・す・わ・よ!!魔焦扇——ハッチャケ・レインボォォォォ!!」
ロッテン・みかんが魔焦扇を目の前にかざした瞬間、凛冽機構が高く鳴り響き、辺りが光に包まれる。
七色の反射光が乱舞し、触れたネクストが片っ端から光の粒子となり消滅する。
だが——
それでも、 ネクストの群れは止まらない。
「い、一瞬で消し飛ばしただと!?
素晴らしいではないか四戒。
だが…まだだ、まだまだ終わらんよ。
そして……スペシャルゲストが間もなく到着する頃合いだ!」
焼け焦げた地平線の向こうから、
白銀の津波が再び押し寄せてくる。
ジョーカーが冷静に状況を分析する。
「……まだ来ます。この密度……終わりが見えません」
未視は立ち上がりながら、その光景を見つめた。
「……まだ……来るの……?」
四戒の怒りと、圧倒的な敵の数。
だがオリジン四戒たちの目に諦めの色は無い。
「ハッ、まだ来るってかよ!
マキナ、ソフィアの回復に全振り!
みかん、温存しつつ迎撃。一匹たりとも通すな!
ジョーカー、敵のおかわりが来る!周囲確認!
全員、増援に備えろ!」
サニーの激にも似た的確な指示に、皆が続く。
「了解しました、サニー。パワーリザーブを回復に回します。———ミニッツリピーター」
「コッチは任せて、サー兄。ソフィア姉には近づけさせませんわ!」
「周囲確認……反応有り……2つ、いや3つ。コチラに近づく反応があります……いや、まだ来ます。サーチ範囲外なので、詳細は不明」
ジョーカーのレーダーが影を捉える。
急速に近づく3つの影。
そしてその影を追うように、更に近づく影。
「フフ……無駄だよ、四戒。
この座標は既に送信済み、じきに増援が到着する。
君たちの抵抗など、すべてムダだという事なのだよ!」
サルモネラ博士の口から発せられた増援とは何者か。
だが、それがどんな強大な相手だろうと、この四人の意思は砕けない。
「ここまで熱くなるのは久々だなぁ、オイッ!」
「そうですわねぇ、サー兄。アタシも久しぶりに本気だしますわよ」
「……回復は任せて欲しい……が、ほどほどにな」
「マキナのお陰でもう大丈夫。次は私も出る!」
折れず、砕けず、曲がらない。
それがオリジン四戒、現世を統べる黄金機構。
―to the Next World-




