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5日目、死の身体

初の2日連続の投稿です!このくらいのペースで投稿できたらなぁ・・・・


ポツリとしずくまぶたにかかって、目を開ける。

目覚めには少々、不吉な薄黒い雲が視界いっぱいに広がる。

降り始めた穏やかな雨がアスファルトに当たり、踊るように弾ける。


俺の背中に硬い何かが触れている。


黒い……地面?あ、アスファルトか。


なら何故、俺は・・・・アスファルトに寝てる?なんでだ?


素朴そぼくな疑問を解決するために、まだ意識がはっきりしないままのだるい身体を起こし立ち上がると目の前に――――、

白目をいたゾンビのおっさん。


俺の思考が全停止。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「うおぉっ!?」


目覚まし時計より強力なドッキリで一瞬で意識を覚醒かくせいさせられた俺は、思わず後ろへジャンプして間合いを取る。

しかし、おっさんは何故なぜ咆哮ほうこうしながら襲ってくることも何もしてこないで魂が抜けたようにボケーっと突っ立ったままだ。

いや、もう魂は抜けてるか・・・・。


ふーっ、と呼吸と心拍を落ち着かせて辺りを見回すと――――、アレ?

近くなら見えたのに、遠くのゾンビがはっきり見えない。

いつの間にか近視になっちまったか?

仕方なく目を細めると、なんとか遠くのゾンビが見える。

大通りには同じようなゾンビがうろうろと彷徨さまようように歩いているだけで、俺のほうは見向きもしていない。


ゾンビが襲ってこない?どういうことだ?

不可解な現象に首をひねる。

ようやく思考が冴え始め、ここでさらに重要なことを思い出す。


「そういえば俺・・・・・、喰われたはずだよな?」

はずだが・・・・、なぜか痛みも苦しみも感じない。

あの震えや、しびれに近い激痛が嘘のように消えている。

なんでだ?と考え込んでいると、不意に自分の姿が見えた。

左にあるビルのガラスに俺の姿がぼんやりと反射している。


「え・・・・・・、えっ?」


その異様さに俺はひび割れた窓ガラスに駆け寄り、そこに映る自分の身体を凝視する。


「これ・・・・・俺、だよな?」


ボロボロに引き裂かれた衣服から露出している、まるで血を抜かれたような蒼白の肌。

それと対照的に赤黒い血の無数の傷跡。

顔には気色の悪い青い血管が浮き出ていて、瞳はドラキュラのように真っ赤になっている。


自分の顔をそっと触ってみる。

ザラザラとした水分が消えたような肌。それはかなり冷たくなっている気がした。


とても生きた人間の姿じゃない。ってことは・・・・・・・。


「つまり・・・俺もゾンビの同類ってワケかよ。でも身体は俺の意思で自由に動かせてるし・・・・どうなってんだ?」


あの時、噛まれた俺は感染してゾンビになってしまったということだ。しかし、不思議と残念な気持ちはなかった。むしろ新しい身体からだを手に入れたようでなぜか、遊び心が沸騰ふっとうする湯のようにいてくる。


「ま、イレギュラーなゾンビになっちまったってことにしとけばいいか」


さぁて、未来たちはどこにいるんだ?


未来とあの中学生たちの捜索を開始しようとガラスから目をはなすと、数体のゾンビが門の周辺に集まっていて、ガシャンガシャンと音を立てて、中に侵入しようとしている。


あそこは未来たちが入っていった工場だ。

ということは、恐らく未来たちはまだあの建物の中にもっているのだろう。


「あれじゃ、あいつら逃げられねぇじゃん」


とは言え、頑丈がんじょうな門はビクともせず、ゾンビは侵入できそうもない。確認したいことを優先にしても問題は無いだろう。

辺りを歩くゾンビを見ていると、柄の悪いシャツを着ているオールバックのおっさんゾンビ―――――、

恐らく暴力団員だったのだろうそいつの腰に投擲とうてき用ナイフが装着されているのに気づく。


「悪いが、ちょっくら貰っていくぜ」


後ろからそっと近づき、さやから鋭い刃を持ったソレを引き抜くと、おっさんの首を横から一突き。

ビクンと大きく震え、口をパクパクと動かしたあと、全身から力が抜けていくのが分かる。

ナイフを抜くと大きな体はうつ伏せに倒れ、動かなくなった背中が雨で濡れていく。


「・・・・・やっぱり痛みは感じてなさそうだったな」


そういえばディスカウントストアで殴り飛ばしたゾンビとかは痛みを感じていないようだった。それは俺も同じなのか?

これは痛覚の有無を実証する必要がありそうだ。

今の俺なら死ぬことは無いはずだし、別に手ぐらい問題ないだろう。・・・・・痛覚あるならかなり痛いだろうけど。


とりあえず刃に付いた不潔な血を拭くべく、ハンカチか何かないかポケットを探ると―――――、


・・・・・・おい、ちょっと待て。


出てきたのがクマさんのハンカチって・・・・・おっさんって、もしかして可愛い小物が好き?


『今日もピンクのクマさん買っちゃったっよー。可愛いでちゅねー♡』んー、ブチュッ。


・・・・・・想像したら寒気がした。人って見かけによらんな。うん、見なかったことにしよう。


ナイフに付着したおっさんの血をきれいに拭き、ナイフを逆手に持ち替えると、左のてのひらを勢いよく刺した。


ズブッと肉を貫く感覚。黒に近い生々しい血が吹き出るが、異常な速さで傷がふさがり、わずかな傷痕きずあとだけになる。

そして、やはり痛みは感じない。


俺はそれを見て、不意に笑いが込み上げてきた。


何度傷ついても自然回復する、痛みも感じない、もう死ぬことのない身体。

痛みも死もないなんてさいこうじゃねえか!

おまけに敵は襲ってこない。一方的な虐殺ぎゃくさつが可能。


まるで自分がゲームのキャラクターように思えてきた。

ゾンビ系を含めるあらゆるゲームをプレイし、世界ランカーにもなったこともある重度のゲーマーな俺にはあまりにも刺激的すぎる身体からだ

この身体があれば、生身の人間じゃできないこともできる訳だ。


なら、ハリウッド映画のヒーローみたいに暴れてやろうじゃねえか。

俺はヒュンヒュンとナイフを振り回しながら一歩踏み出す。










さあ、ゲーム開始だ。



10話を読んでくださり、ありがとうございます。

こんにちは、リッキーです。

ゾンビとなった貴士のお目覚めシーンを書きました。

今回は笑えそうな場面をいくつか入れてみましたがいかがだったでしょうか?

少しでも笑ってくださったなら幸いです。

次回の内容は未定ですが、数日で書き終えるようにします。



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